第18話「思い描く強さ」

「うう……小次郎さん、ドンタさん、レイカさん……くそ!」

 トウマは拳を地面に叩きつけている。


「あ、あれ見て!」

 イリアが指差したモニターには、ニコ・マオリとブラックドラゴンの戦いが映し出されていた。




「ミサイル発射!」

 チュドーン! チュドーン!

「う~、やっぱり効いてないよ~」

 ニコは何度もミサイルを撃ち続けているが、ドラゴンの硬い皮膚を貫けずにいた。


「うーん、さっきから思ってたんだけど、あのドラゴンさんって何もしてこないわね?」

 マオリが不思議そうに首を傾げる。




「え? ……あ!?」

「どうしたの?」

「神の目で見えたけど、あいつは敵の攻撃をワザと受けて強くなるタイプなんだ!」

「え、ええええ!?」


- その通りだ。奴の能力は余でも手こずる程なのだ。さあ、そろそろ反撃するがいい -


 大魔王がそう言うと




「ガアアアア!」

 ドラゴンが口から勢い良く熱風を放った。


「え? うわああー!?」

「キャアアアーー!」




「あああ!? ニコ、マオリー!」

 トウマは思わず目を瞑ってしまった。

「……あ! トウマ、目を開けて見て!」

 イリアがそう叫ぶ。

「え? あ、ああっ!?」

 



「ふう、大丈夫? ニコ君」

「うん。やっぱマオリお姉さんは凄いね」

 マオリは光の防御膜を張って熱風を防いでいた。



ー 何!? あ、あれはまさか!? ー

 大魔王はマオリの力に思い当たる節があったようで、驚き叫んでいた。


「ねえトウマ。あたしもあれと似たような力を知ってるけど、まさか」

「多分そのまさかだよ」




「うーん、でも私じゃドラゴンさんをやっつけられないし、あら?」

 マオリは足元のニコを見つめ、何かに気づいたようだ。

「ん、何?」

「今わかったけど、ニコ君には『聖命力』が溢れてるわ」

「何かわからないけど、それがどうかしたの?」

「ええ。それって望めばどんな姿にも変わるのよ。あっという間にドラゴンさんをやっつけられるくらいにも」

「え? でもどうやれば?」

「私が力を貸すから、強く念じて」

「う、うん」

 するとニコの体が光輝き始めた。



ー ぬう!? ま、まずい! ドラゴン、さっさとあの二人を始末しろ! ー

 大魔王の口調は凄く焦っている様に聞こえた。



「グアアアア……ガアッ!」

 何とドラゴンが口から巨大なミサイルを発射した。




「何いいいーー? あ、あんなのありかー!?」

「ちょ、今度はマジヤバいかもー!?」


 だが


「ええーい!」

 ミサイルは二人の手前で消滅した。



「……え?」

「あ、あれ?」


 

「それがニコ君が思い描く強さなのね」

 マオリが見つめる先にいたのは


 髪は短めの金色で顔立ちは幼さがある一人の少年だった。

 

 身長はマオリと同じ位で、黒い肩当てに肘当て、膝当て。

 黒いTシャツに長タイツを身に纏っている。

 

「こ、これが僕? うわあ」

 その少年はニコが変身した姿であった。



「ええー!? あ、あれってニコよねー! めちゃ可愛い-!」

「な、な、あんなの見えなかったぞ?」



「さあニコ君、ドラゴンさんを」

「うん! よーし、とりゃあー!」


 ニコが高く飛び上がる。


「グアア……カアッ!」

 ドラゴンがミサイルで撃ち落とそうとするが


「えい!」

 ニコはそれを蹴り飛ばし、城の壁に激突させた。


 そして両手を前に出し、体を横回転させながらドラゴン目掛けて突撃していった。


「グアアアア!」

「うりゃああああ!」


 ドゴオッ!!


「ガ。ア……」

 ドラゴンは額にニコの一撃を受け、気を失って倒れた。


「ふう、やったあ!」

 ニコはガッツポーズをとって喜びを表した。


「ニコ君、お疲れ様」

「ありがとお姉さん」




「す、すげえ。あのドラゴンを倒すなんて」

「うわー! 後でニコを口説いちゃおうかなー!」



- お、おのれ、あれはさっきの二人同様危険だ。ならば -


 ゴゴゴ……


「ん? 何この音?」

「お姉さん危ない! うわああああ!」


 ドラゴンが突如大爆発し、それが二人を巻き込み……


 後には瓦礫の山が残るだけだった。



「ああっ! おい大魔王、てめえが手を出すなんて反則だろうが!」


- 反則? 馬鹿め、これは殺し合いだ。親善試合をしているのではないのだぞ -


「ぬ~! ならあたし達も、と言いたいけどこっから出られないし、くそー!」

 イリアが地団駄を踏みながら悔しがる。



ー フハハハハ。さあ、残りは二人……あれは四天王では荷が重いかもしれんが、奴らも無傷とはいくまい ー



「マウなら大丈夫だよな。なんせ」

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