第166話 眠りの神

兄のタナトスが非情の性格であるのに対し、ヒュプノスは穏やかで心優しい性格であるとされます。



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本文


ナンナの持つ剣の秘密とは…………

空間切断能力…………ナンナの剣の軌道がそのまま切断される能力である。

質量を持った物質はどんなに小さいさな質量であっても、それなりの重力場をつくる。

砂粒一個であっても重力場をつくって、周囲の時空を歪める。

この重力場は時間と空間=時空を歪めるのだ。

ただ、日常にある物質、地球くらいに質量が集まっても重力場による時空の曲率は極々わずかで、人間が気がつくほどでは無い。

現在太陽のすぐ近くを通って地球にやって来る光がほんの少しだけ曲がることが観測されている。

代表的な物はブラックホールだ、太陽の数十倍以上もの質量が圧縮されてできたもので、その重力場は中心から近くであれば非常に大きく、時空は極端に歪められていて、直進するはずの光が閉じこめられる程だ。

光=電磁波は質量ゼロなので重力場の影響は受けないはずであるが、時空そのものが曲げられているので、空間の曲率にしたがって進む=電磁波さえも閉じこめられてしまう。

詰りナンナの剣は魔力により巨大な質量を造り出し、時空その物を歪めてしまう武器なのだ。

ナンナはニュクスに対してそれを行使した、ニュクスは間一髪それをかわしたが、後方にかわしたと思いきや、時空を歪めたナンナの攻撃で、逆にナンナに近付いてしまっていたのだ。



「何をした? 何故私がお前に近付いている⁉」


「空間切断…………今私は貴女と私の間の空間を歪め、空間その物を消失させたのです」


「な! ………………ば、馬鹿な‼ そんな事が」


「出来るのですよ、この剣はそう言う剣何です、今私が何を考えているか解りますか?」


「し、知らない‼」


「貴女の手足を切断して主人様に渡そうと考えているんですよ? 大丈夫です、しっかりと血止めはしてあげます、死んでしまっては性奴には成りませんからね~」


「さ、させるかーー! 私の全魔力を持ってお前の息のねを止めてやる!」


「させると思いますか?」


ナンナがニュクスに向い剣を振るう


シュオー‼


同時に空間が切断されニュクスの左腕が飛ばされた


「あ! アァァァ!」


「血止をしてあげましょう」


「う! 腕がーー!」


「それでは次ですね? 右腕を…………」


「待って! 待ってちょうだい、貴女の主人の性奴になるわ! だからこれ以上傷着けないで‼」


「信用出来ませんね? 私が引いた途端に襲うつもりじゃないですか?」


「しないわ! 約束するから」


「ではこれを着けて貰いましょう、これは貴女の力を全て無力化する宝玉です、魔力は一切封じ込められます、自分で着けなさい」


ニュクスは自らその宝玉を首からぶら下げた


「こ、これで良い?」


「良いでしょう、では付いて来なさい」


時を同じくしてシャチーとカーリーも戦闘体制に入っていた。


「こっちもおっ始めようか、シャチー」


「そうだね、気持ち悪い奴…………」


だがオネイロスの一つが人形を取り始めた


「え? あれ形が…………」


「シャチー! プロビデンスを開け! 急いで! 私達は幻を見せられていた! こいつ初めから人格神だ!」


シャチーはプロビデンスを開けた、そこに見えたのは三柱の人格神だった。


「まさか僕達の幻影を見破る者が居るとわね……」


「モルペウス、術を解くよ?」


「ああ、パンタソス、もう良いよ、どのみちこの子達には幻術が通用しないようだ」


「ではこのイケロスの術はどうかな? 試してみよう」


三柱の神が今度は狼の形になる


「通用しないって‼ 行けドゥン‼」

「こっちも行くよ‼ ドゥン‼」


ドゥンが飛び出し狼三匹対獅子二匹の戦いが開始された


お互いに襲い会う獣たち、だが…………


「幻影は通じないって言ったよね?」


シャチーの攻撃が何も無い空間に襲いかかるが…………


「うわ!」


空間が歪みそこからパンタソスが出現した


「危ない危ない…………」


「あたしたちのプロビデンスは万物を見通す目、あらゆる物はあたしたちの前では真実を写し出すの、そんなまやかしは効かないよ?」


「鬪神ドゥルガーに戦神カーリーか、厄介な相手だね…………」


「では一応僕達も自己紹介しておこう、それと…………僕達は君達と敵対しない」


「はあ? さっきまで戦闘状態だったじゃないか!」


「そうだね、でもほら…………あっちを見てみて?」


正に今ニュクスが腕をナンナに切り落とされた所だった


「旗色が悪くなった途端に逃げ腰かい? 情けない神だね…………」


「何とでも言うと良いさ、僕達は本来争いは嫌いなんだ、心優しきヒュプノスと僕達は本来人々の疲れを取り、夢を見させるのが役目何だよ、僕は人形の夢を紡ぐモルペウス、こっちは獣の夢を紡ぐイケロス、こっちは物体の夢を紡ぐパンタソス、僕達はヒュプノスとタナトスの兄弟でニュクス母上から産まれた存在なんだ」


「説明どうも、んで? 止めるの? 別に私達はどっちでも良いけどさ?」


「鬪神と戦神相手に戦いを挑む程馬鹿じゃないよ、さっきも言ったけど僕達は本来戦いをする者では無いんだ、幻影を見せるのが背一杯何だよ、故に戦うための武器も持たない」


「あー…………拍子抜け…………」


「悪いね、ここで暇させて貰うよ」


オネイロス達は去って行った…………


「シャチー、、あたし達何のために残ったの?」


「あたしに聞かないでよ!」


「そちらも終わった様ですね?」


「不戦勝なんだけどね?」


「オネイロス達は夢の神、戦いを好む者達では有りません、見逃してあげて下さい」


「良いの? ナンナ」


「牙を剥かない相手には手は出しません」


「ありがとう…………息子達を見逃してくれて……」


ーーーーーーーーーー


俺達は対にレーテーに辿り着いた


「ここがレーテーか、この川の向こうにハデスが居るんだな」


「そうだよ、だが皆にはここから立ち去って貰いたい」


「それは無理だヒュプノス!」


「この川にも渡し守が居るのか?」


「アイオロス…………居ないよ! この川は只の川さ、この場所でそもそも結界など本来必要としないからね、だから今一度言う、ここから立ち去ってくれないか?」


「こちらも今一度言う、マナの壺を返せ、それが出来ないならこの場でお前を倒して俺達は進む」


「…………僕は本来人を傷つけたくないんだ、だから争いは好まない、でもハデス様に逆らうと言うなら戦う以外に無い」


「そうだ、だから俺がお前の相手に成ろう! 大和、アグディスティス! 先に進め! ここは俺が抑える‼」


「解った‼ アイオロス、頼んだぞ‼」


「じゃあ皆~ママに掴まるのよ~!」


「え?」


皆が母ちゃんに掴まると向う岸まで転移した


「こんな便利な事が出来るなら何で今までやらなかったんだよ! 母ちゃん」


「酷いわ健ちゃん! ママイナンナちゃんみたいな事出来ないから見える所でしか転移出来ないのに…………」


「あーーーー! 解った!俺が悪かったから泣くな‼」


どう考えても嘘泣きだが…………



「逃したか、、流石はアグディスティスと言う事か…………」


「ヒュプノス、お前のハデスへの忠誠は解って居る、だからこそ敢えてお前にはこの戦いで初めて問う、お前はハデスが本心でこの戦いを始めたと思って居るのか?」


「それはどういう意味だい? アイオロス」


ーーーーーーーーーー

第十三プリズン


ネーレウス対ネメシスの戦いが始まろうとしていた。


「ネーレウス、私の二つ名をご存知か?」


「さあな、俺は自分以外の事には然程興味が無い」


「ならばその身で味わうと良い、このウイップで! ネメシス.アドラスティア‼(逃れられざる者)」


ネメシスの鞭がネーレウスに襲いかかる


バチン‼


ロンゴミニアドで鞭を弾くネーレウス


「アドラスティアか、成る程……それは調度良いかもな、お前はそう言う運命だったのかも知れん」


「どういう意味ですか?」


「いや何……俺達の一応大将からお前に対しての特別な言及がされててな……無視しようかと思ったがそう言う事なら一応大将の指示通りにしてやろうかと思ってな…………」


「アイオロスですか?」


「違う、今回の大将は大和だ!」


「アグディスティスの息子から? 何を言及されているのですか?」


「ネメシスは殺すな! とな…………」


「何故ですか?」


「お前とやりたいらしいからだ……大和が」


「何を?」


「交尾だ!」


「殺します!」


「俺ではない!」


「仲間なら同罪です‼」


切れまくりヒステリックになったネメシスが鞭を滅多うちし出した


「お! 俺は関係ないと言っているだろ‼」


「同罪だと言いました‼」


無実の罪で裁かれるネーレウス

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