第161話 大英雄と大天使

アイオロスは様々な作品に名前が登場します。

ですが本当の彼はテッサリア王です。

戦士ではないんですよね…………


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本文


テーセウスとミカエル、現在は膠着状態に成っている。

テーセウスは名高き名槍ブリューナクで寸分違わぬ光速の突きを繰り出している、その槍術の性格さ、早さは正に神技と言えるだろう。

だがミカエルも負けてはいなかった、天使最強の名は伊達ではなかった。

右手に剣、左手に魂の公正さを測る秤を携えていると言うミカエルは、もっとも偉大な天使の一人であり、熾天使セラフィムとして位置づけられることもある。


「流石だね~、僕とここまで打ち合った者は何百年振りだろう? 君凄いよ!」


「そっくりお返ししよう……流石は海王軍最強と言われる槍術、まるで付け入る隙が見当たらない、それどころか一瞬でも気を抜けばこちらが串刺しに成るのは必至」


「ではそろそろ僕の秘技をお見せしないといけないね? このブリューナクと言う槍、実は幾つかの槍が合わさって出来ているんだ、普段は一本に纏まっているんだけど、僕の意思だけでそれは全く別の性質を持つ物へと変化する。さて、耐えて見せるんだよ? 」


「冗談では無い、今のでさへ目一杯だと言うのに、この先がまだあるのか…………だがそれを見たいと思う私も居る…………私も大概のバカだな?」


「純粋に戦いにうち震えるのが戦士の心さ、君のその気持ちに僕は最大の敬意を払うよ! 君は確かに最高最強の天使だ、ではまず君にこの槍の事を話そう。この槍の名はブリューナクと言う」


「ケルト民族に伝わる秘宝か‼」


「そう、だが元々は海王の一族が所持していた、それを僕が戻したのさ、このブリューナクは実は一本の槍ではない、先ず耐えて見せるんだよ? Four Jewels of the Tuatha Dé Danann!

『トゥアハ・デ・ダナーンの四秘宝』」


テーセウスが呪文を唱えた瞬間に槍を取り巻く雰囲気が変わった


「では行くぞ! イヴァル‼」


槍がテーセウスの手から放れ、猛烈な勢いでミカエルに向かって飛んでいく


「く! 弾け! バランスオブスケール‼」


ミカエルの秤がブリューナクの一撃を同じ威力の攻撃をカムフラージュして相殺する、が、……


ビキ‼


秤に亀裂が走った


「アスィヴァル‼」


槍がテーセウスの手に転位した。


「何と言う威力だ! しかも私の心像を寸分違わぬ位置で飛ばすとは…………」


「最初の呪文はルーを目覚めさせたんだ、Four Jewels of the Tuatha Dé Danannの呪文はルーを、ルーが目覚めるとこの槍は不敗の呪いがかかるんだ、詰り負けない呪いだね。


そして峰ばった黄金のアッサルの槍、ひとたび血をこぼせば後誰も生かしてはおかず、イヴァルと唱えて投げればけっして逸れないこと疑うべくもなく、アスィヴァルと呼べばたちどころ戻ってくる。

これはティアマトの伝承だがアッサルとはこの槍の持つもう一つの顔。

さて、もう一つ行こうか? 次も強烈だよ? Slaughterer‼『殺戮者』」


ブリューナクから激しい炎が吹き出し辺り一面を高熱で焼き尽くす


「何と言う槍だ‼ バランスオブスケール‼」


激しい冷気が秤から吹き出しブリューナクの炎を相殺した。


「見事だ! よく耐えたね! これはアーラワルの槍と言ってブリューナクからの三つ目の顔だよ! そして四つ目‼ the famous yew of the wood‼ 『森でこよなきすばらしき(イチイ)の樹』」


急激な雷撃がブリューナクを包み、その光線がミカエルに襲いかかる


「クハー!」

剣で何とか受け止めたミカエル


「これはイチイ槍と言うイチイの樹で造った槍の持つ異名だ そして五つ目! ルイン‼」


どす黒く濁ったオーラが槍にまとわりつき


「これは! バランスオブスケール‼」


だが秤はもたなく、対に…………


バリン‼


割れた。


「呪いか! 他のものを呪う槍…………」


「そう、ルインは呪いの槍…………そしてこの五尖槍、もう意味が解ったかな?」


「その五尖槍が今までの攻撃を纏めて放てる…………そう言う事かな?」


「ご名答! この槍、ブリューナクの五色の槍を放たれ生きていることあたわず……君の最後だ。もう一度言おう、僕達はゼウスとは反目だ、そして人間達を隷族させるような事はさせない、それが我が父ポセイドーンの意思でも有る。それに対して意を唱えるもの有らば、このブリューナクで僕が排除する。君はどうするのかな?」


「今更後には引けない、私も全力で我が意思を貫こう‼」


「良い覚悟だ、では去らば! 最強の天使ミカエルよ! Sleg cóicrind‼」


稲妻となって敵を死に至らしめる灼熱の槍、その稲妻は五条の光線となってミカエルを襲った。


「炎よ! 剣に宿れ‼ Vortex of flame!」


ミカエルの剣から巨大な炎が吹き出し渦となってブリューナクを迎え撃つ、五条の光線を一本、二本と焼き付くし、最後の一本で炎は鎮火される、そして…………


「見事だ‼ ミカエル、ブリューナクを四本迄はね除けたのは君が初めてだよ! 僕は君の事を生涯忘れないだろう……」


最強同士の戦いに決着がついた、だがテーセウスの圧勝と言う訳にはいかなかった、ブリューナクはその五本の槍の内、四本の機能をミカエルに破戒されてしまったのだから


「君と……もう少し早く有っていれば…………ゴフ‼ 私ももう少し……違った生き方が出来たかもしれないな…………」


そこに健達が追い付いて来た


「テーセウス‼ そいつは…………」


「彼は強かったよ、大和君、そして戦士だった…………」


「そうか…………」


「君が健大和か…………仲間が君に卑怯な手を使っただろう?」


「ああ……」


「すまなかった……だが見事退けた様で良かった…………ゴフ‼」


「もう喋るな、無理をしなくていい」


「最後に一つ言って置こう、この先に待つ四人の神は強い、君のブリューナクの状態ではかなり苦戦を強いられるだろう。テーセウス、私の剣を持っていけ、この剣はレーヴァティンと言って炎を操る事が出来る剣だ。君に託そう…………では、去らばだ、強敵『とも』よ…………」


「君の戦士の誇りと共にそのレーヴァティン、僕が引き継ごう」


「行こうか、テーセウス、お前にも話しておかなきゃならない事が有る」


「時間もあまり無いね、この先では伯父貴が戦って居るはずだ、急ごう」


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第九プリズン、アイオロスとガブリエルの戦闘が始まろうとしていた。


「一応確認して置こう、天使には明確な男女の差は無いはずだ、お前もそうだな?」


「無論だ、確かに私はティアマト人だが、男女さと言うものは等に過ぎ去った過去、現在においては男も女も無い、それは貴殿方神も同じであろう? 転生などと言う無駄な事をするから男女等と言う面倒な感情を持つ事になる」


「お前には後世の若い魂を育て上げようと言う気持ちが欠片も無いようだな…………」


「人間等と言う利己主義の権化等を育てて何の得が我らに有ると言うのだ?」


「貴様も覚醒前は同じであったろう‼ 我らティアマト原初人が育てたからこそ貴様は大天使と言う覚醒に至ったのだ!」


「これ以上必要が無いと言っている、宇宙は充分に育った、後は清く正しい魂のみを厳選し、他を斬り捨て清浄な楽園と地球をするのだ、その為の清めを我らが行っている」


「黙れ! 貴様のようなクズ、最早大天使等と私は認めん‼」


アイオロスの鬪気が全身にみなぎって来る、アイオロスは普段あまり武器を使わない、殆どが肉弾戦の闘いを好んでおこなう。

それはアイオロスの戦い方よる物が大きい、何故ならアイオロスは体術を得意としているからだ。

現在で言う空手と気功法が混ざった様な体術、言わば古武道に近い物である。

日本には1500年も前に、竹内流柔術腰廻小具足と言う古武術が有った、これは戦での合戦武術であり、徒手にて行う最古の武術である。

恐らくは元々アイオロスの様に徒手空拳による攻撃が得意な者が開祖となって広めた武術であろう。


「ん⁉ 何だ? アイオロスの体が気によって歪められていく…………」


「面白い話を大和から聞いてな? 大和の時代でアニメと言う娯楽に私が登場するそうだ、その私はやはり徒手空拳でこんな技を使うらしい…………」


ニヤニヤと笑うアイオロス……


「行くぞ! アトミッ○サンダーボルト‼」


アイオロスの右手が光ったと思ったら、刹那、無数のパンチが繰り出される、それは正に射手座の金ピカ鎧のあの人の技だった。

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