侵略してきた宇宙人のゲームを命がけで攻略するゲーマーの話
RYOMA
第1話 GAME START
それは何気ない日常に突然訪れた。地球の各都市の上空に、巨大な未確認飛行物体が現れたのだ。地球上にある国々の政府は混乱した。ある国はすぐに攻撃を開始し、ある国は対話を試みた。何もせずに静観した国もあったが、その国々の全ては同じ結末に至った。それは兵器や軍事施設の完膚なき破壊であった。
地球の国々は、強大な敵の前に仮初めの協力関係を築いた。そして残った兵器で最後の抵抗を試みるがそれは無駄な事であった。地球上の兵器は、謎の飛行物体によって全て破壊され、完全なる敗北を喫した。
全ての兵器が破壊されると、それまで対話に応じなかったその謎の飛行物体から、全人類に向けてメッセージが送られてきた。それはこんな内容であった。
私達とゲームをしないか。それに勝てば、私達はこの星を去るであろう。だが貴方達が負ければ、この星の全ての生命は私達のものになるだろう。
拒否する選択など人類に残されていなかった。地球の国々はこのゲームとやらを受け入れた。
すると侵略者からゲームのルールが送られてきた。それは人類にとっては希望に満ち溢れた内容であった。プレイヤーは、全世界から、15歳から50歳までの中からランダムで選ばれた10万人。ゲーム内容は、侵略者の用意した星から、10万人のプレイヤーの1人でも脱出できれば人類の勝利というものであった。
かなり人類に優位なルールのように見える。多くの人は何か裏があるのではないかと勘ぐったが、侵略者がその気になれば人類は簡単に皆殺しにされるであろう。それを考えれば破格の条件に思われた。
選出される10万人のプレイヤーは、侵略者によって、数日後に一方的に通知されるそうで、その選出方法も、通知方法も謎に包まれた。その為に、世界各国対象となる人々は、その運命の日まで眠れない日々を過ごしていた。
★
モニターに映るのは、勝利を宣言する言葉であった。画面上には1280連勝の文字も表示されている。敗北相手からゲーム内チャットでメッセージが送られてくる。
「あなたは最強です。ぜひスターエスケープのプレイヤーに選ばれて、地球を救ってください・・か、まあ、俺を選んでくれるなら、その希望に応えてやれるけど・・」
突然、部屋のドアが勢い良く開かれた。そして悠志郎の妹である
「馬鹿なお兄ちゃん! ゲームしか能がないお兄ちゃん! 生まれて22年間彼女がいないお兄ちゃん! お願いだから宇宙人のゲームをクリアして! ゲーム得意でしょ? いや・・ゲームだけは得意でしょ? こんな時にしか役に立つ機会ないんだからお願い!!」
俺は妹を真顔で見つめながら冷たくあしらう。
「俺は今、深く傷ついている。愛する妹から馬鹿だの彼女がいないだの、散々なことを言われたので引きこもることにした。たとえ宇宙人のゲームのプレイヤーに選ばれても、もう家を出ないぞ」
瑠奈は、嫌味な俺の言葉に怯むことなく、言葉を返してくる。
「何言ってるのよ、もうだいぶ前から引きこもってるじゃない」
「うるさい! これは引きこもってるんじゃない! 自宅籠りだ!」
「何よ自宅籠りって」
「あれだ、山籠りの自宅板だ! 俺はゲーム修行で忙しいんだよ!」
完全に呆れ果てた顔で瑠奈は、馬鹿な兄に氷点下な言葉を投げつける。
「お兄ちゃんなんて、ゲームのやりすぎで、なんかいつも目の裏側が痒くなっちゃう病気になればいいのよ!! お兄ちゃんの馬鹿!」
そんな捨て台詞を言って、瑠奈は部屋を飛び出した。
「なんだよ目の裏が痒くなる病気って・・」
瑠奈は自分の部屋のドアを乱暴に閉める。そしてベットに寝転がりながらスマホを見てため息をつく。瑠奈は、ずっと片思いだった学校の先輩に先日告白された。すごく嬉しく幸せなこの時に、宇宙人なんてわけのわからないモノに、地球が侵略なんかされてしまった。いい加減にしてほしい。なぜこの私が幸せなこの時なのだ。もっといくらでも不幸な時期や疲れて嫌になっている時はあったに、なぜ私が幸せになった途端に、こんなことになるのだ。やりきれない怒りと不安がMAXになり、ダメな兄貴へとその矛先は向いた。
妹が部屋から出て行き、悠志郎は久々にRPGでもやろうと、ゲーム機の電源をオンにする。日本国民なら誰でも知っている有名タイトルの新作をゲーム機に入れる。実はこのゲーム、発売して三日で完全にクリアしているのだが、悠志郎にとって、このシリーズ久々のヒット作であり、もう一度プレイしようと思っていたのである。
オープニングが終わり、さて始まりの村から、次の街へと向かおうとした時に、その変調は起こった。目の前が一瞬ブラックアウトする。ゲームのしすぎで目が疲れたかと目薬を使おうと、薬を置いている棚を見るが、そこに棚は無くなっていた。
異変に気がついた悠志郎は、周りを見渡す。そこは明らかに自分の部屋ではなかった。10畳ほどの無機質な部屋に、大きなモニターが置かれていて、壁際には黒の机が置かれている。その机の上には小さなモニターとキーボードがあり、何かの端末のようであった。
ゲームのコントローラーのようなものが、部屋の真ん中にあるテーブルの上に置かれている。テーブルの上には他に、モニターのリモコンと小さなデジタル時計、そしてメモ用紙と筆記用具が置かれていた。
部屋には、モニターを正面に右側に二つ、左側に一つ、合計三つのドアがあった。後ろ側には小さな小窓のような扉があって、開けようとしたけど開かなかった。
俺はとりあえず、ドアの向こうがどうなっているのか確認することにした。まずは右側のドアの一つをそっと開ける。鍵はかかっていないようで普通に開いた。開いたドアの向こうは・・トイレであった。
右側にもう一つのドアを開く。一つ目を開く時より大雑把に中を確認する。そこには洗面台があり、その洗面台の横には扉があって、中はシャワールームであった。
これは普通に生活できるなと考えながら最後のドアを開いた。そこには小さなベットが置かれていた。どうやら寝室のようである。
ここで一つ気がついたのだが、この部屋・・出入り口が無い・・そもそもどうやって俺はここに入ってきたんだろうか・・全く記憶が無い。
とりあえず何かわかるかもしれないので、モニターの電源を入れてみた。そこに映し出されたのはゲームサイトのトップ画面のようなものであった。いくつものゲームのバナーが並んでいて、どれも知らないものばかりである。悠志郎は試しにゲームコントローラーで動かしてみて、その中の一つを選択した。
バトルデモナー・・それがそのゲームの名前であった。内容は対戦型のストラテジーゲームのようで、試しにプレイしてみる。なかなか出来が良く、素直に面白いと思える内容であった。
ゲームを一度落として、トップ画面に戻ってみる。俺はそこで画面の右上にあるマークが点滅しているのに気がついた。その点滅している場所を選択してみる。ユーザー画面のようなものが開かれて、そこには俺の名前が表示されていた。
「ユーザー名 風ノ森悠志郎・・どうして俺の名前が?」
名前の下にはポイントという項目が表示されていて、650ポイントと書かれていた。悠志郎は少し考え込む。俺はそれほど鈍くないので、正直、これが宇宙人の用意したゲームの舞台だということはもう理解していた。問題は今がどんな状況なのか・・ゲームの内容はなんなのか・・何をやるべきなのかということであった。
どうもゲームをプレイするとポイントを貰えるようだけど・・ポイントがあるってことは、それを使う場所があるってことで・・
ポイントの使用する場所・・俺は部屋を見渡して、唯一それらしいものに目をやる。机の上に置いてあるモニターとキーボード・・すぐにキーボードにある電源ボタンを押して、それを起動する。
予想は的中していた。立ち上がったそのモニターには、ポイントを消費して獲得出来るアイテムが一覧になって表示されていた。アイテムの一覧はカテゴリー毎に分けられている。近接武器、遠距離武器、補助装備、車両兵器、武装兵器、生活用品、食事、スペシャル、その他・・
食事や生活用品と並んで、武器や兵器のカテゴリーがあるのには違和感を覚える。試しに近距離武器のカテゴリーの一覧を開いて見てみた。
一番必要ポイントが低いのが・・メタリックナイフ、50ポイント・・高いのは・・これか、プラズマレーザー・ブレードで1750ポイント・・アイテム名とポイントの表記の下に詳細説明が書かれているので、それを少し読んでみた。
攻撃力1200、グリップにあるスイッチを押すと100cmのレーザーの刀身が固定出現する。エネルギーパック1個でのレーザー放出時間は約5時間、予備のエネルギーパック3個付き。
「攻撃力1200が強いのかどうか・・・」
そもそもこの武器を獲得したとして、どこで使うのだろう・・車両なんかもあるみたいだし・・本来、宇宙人のゲームは、どこかの星からの脱出ゲームのはずだし・・・
「いや・・そうか、わかったぞ! これはそのゲームの準備期間なのか!」
ここでゲームをプレイしてポイントを貯める。そしてそのポイントを使って少しでも有利にゲームを進める為の準備をする・・そうなると準備期間がどれくらいあるのか気になるな・・・
その答えはユーザー画面に表示されていた。
(GAME START TIME 180 days)
約半年・・・長いのか短いのか・・おそらくこのゲームの攻略は、この準備期間にあるような気がする、それを考えれば短いくらいかもしれない・・
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