家族


 仕事で疲れた心と体を癒すのはお風呂でも無く、冷えたビールでも無い。

 『お帰り』と言って迎えてくれる愛しい家族だ。何気ないいつもの日常が僕の心を癒してくれる。



 今日も仕事が終わりすぐに家に帰る。

 「ただいま」と玄関の扉を開けると返事が無い。いつもなら子供たちが走ってきて、奥から妻の声が聞こえるはずなのに今日は無い。


 テレビの音が聞こえるからそれに夢中で僕が帰ってきたと分からないんだと思い僕はリビングに行く。ドアを開くと子供たちが笑いながらテレビを見て、妻が食器を洗っている。

 そんな光景を思っていた僕の目に写った現実はそんな暖かく無かった。


 生々しい鉄の臭い、辺りはペンキを塗ったみたいに赤く飛び散っていた。食器は床に割れていて争った形跡がある。

 僕の目に写ったのは僕の愛する家族の冷たく動かなくなった体だった。

 

 僕は地面に力が無くなったようにへたりこんだ。自然と目から涙を流していた。

 警察に連絡をしたのは一時間も後のことだった。我に帰るまで僕はずっと死体を見ていた。

 警察に事情聴取をされながら僕は密かに殺人犯に復讐を決意した。

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