安定なんてクソくらえ

@tomaju

グラム・エーカー

10年前、当時14歳だったグラム・エーカーは実家を飛び出した。

エーカー家は代々、辺境伯であるルフマン家に仕える嘱託騎士の家系である。

嘱託騎士といういつクビを切られてもおかしくない立場から、父はいつも身分に対してヘコヘコと従順であった。

毎日同じ時間に出動して毎日同じ時間に帰宅する。

命がけで他人の領土を守り、それなりの給料を貰う。

そんな父の人生には父自身の意思が、夢が、誇りが、無いように感じられた。


だから単調な人生に抗うために、グラムは冒険者になった。


ーーーーーーーーー

毎日同じことの繰り返しだ。

依頼を受けにギルドへ行き、魔物を狩り、ならず者を捕らえる。仕事が終われば、いつもの飲み屋「かちどき亭」で看板娘のエリーナのケツを見ながら安酒を飲み、起きたらまたギルドへ。


毎日だ。報酬は貰えるが消耗品と生活費、飲み代を差し引けばあとには何も残らない。

勿論、危険度の高い依頼を受ければ、報酬も高くなる。

しかし命あっての物種だ。個人主義で後ろ盾のない冒険者たちは基本的にビジネスにおいてリスクを取らない。


グラム・エーカーは退屈していた。

かつて嫌った父のような単調な人生を送る自分に。代わり映えのしない世の中に。


そんなときだった。

ミト教の総本山たるミト神聖共和国が、魔王の再誕を告げたのは。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る