第3章 桜に込めた願い

俺は、久しぶりのたこ焼きを頬張る。 お祭りの食べ物は、何故こんなに美味しいんだ。

そんな疑問を抱きながら後輩と家にいた。

  「そういえば先輩。さっき、涼香のお母さんに会ったの。未だに自殺理由分かってないじゃない?ただ、自殺する1週間前くらいに、涼香の様子がおかしくなったのは聞いたの。」

  「どういう事だ。詳しく説明しろ。」


____涼香は、エープリルフール一週間前から毎日、レターセットを買っていたそうよ。誰に書いてるの?って聞くと「ソメイヨシノの桜」と答えたそうよ。

でもね、涼香はあまり、花を好む子ではないの。それに、花に手紙っておかしい話よね....。どうやって、桜なんかに...


「タイム...カプセル的な...? もしかして、涼香はSOSの意味を込めてたり...してたのか...?」

.....だとしたら、俺は今まで....何やってたんだ。俺は、涼香のSOSに気づけなかったのか。.....あいつの、彼氏だったんだよな....。


  「探そう。何か分かるはずよ! 直接の手がかりはなくても何かあるはず。涼香は、簡単に命を捨てる子じゃないでしょ?」

  「そうですよ!先輩。行きましょう。」

....簡単じゃないのは分かってる。でも、少しでも手がかりになるなら....。

  「か、、、考えさせてくれ。」

  「先輩.....」


______あれから、後輩たちが帰って数時間。俺は、涼香のことばかり考えていた。もう、2年も経ってるのにあいつが居る気がして...。二人の提案を邪魔するようなことを言ってしまった。

明日、来たら言おう。探そうって.....。

 

 けど、次の日二人は来なかった。ケータイも通じない。


全部俺が悪い。二人は前に進もうとしているのに、俺はいつまでも前に進めず後ろ向いて。こんな俺を見たら涼香はなんて言うのかな...。


  「ダサい。そんなグズグズしたりゅう嫌い。それに、二人に頼らないりゅうも大嫌いっ!!! でも、最後のお願い...聞いてくれたら許す。私の最後のお願い、それは私が居なくても真っ直ぐ未来だけを見て生きて。私は、いつも前だけ見ていたりゅうが好きだから。」


  「...涼香。じゃあ、ひとつだけ教えてくれ....。なんで死んだんだ...」

  「桜の木。探せば分かるよ。そんなに難しいとこに埋めてないから。それを探すのが彼氏としての最後の任務だよ。じゃあね。」


...彼氏としての最後の任務...。あの時守れなかった分、今度は必ず叶えてやる。

きっと埋めたのは、ここから電車で一時間くらいかかる、涼香の好きな大きな公園だ。


 俺は、ドアを開ける。春なのに吐きそうなほど暑い。それでも、後ろは向かない。


ドアが閉まると同時に、2つの影が揺れた。




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