第3話 パパは浮気してる?

パパの今日の予定は飲み会と聞いていたが、8時前には帰ってきた。私は丁度お風呂から上って着替えたところだった。


「ただいま」


「おかえりなさい。夕食はパスでよかったのね」


「同僚とビヤホールで済ませた」


「飲んだのに早かったね」


「この前の失敗があるから早めに切り上げたんだ」


玄関に迎えにでたが、パパはなぜか私と目を合わさない。なにかを隠そうとしている? うしろめたいことでもあるの?


ひょっとすると、飲み会の相手は女性? カバンを持って後ろを歩くといつもとは違うような匂いがするので、鎌をかけてみる。


「パパ、同僚は嘘でしょ。女の人の匂いがする。女性の同僚?」


「ええ!」


驚いているので、図星かな?


「洗濯しているから分かるの」


「そんな匂いする?」


困った顔をしている。


「好きな人がいるなら、はっきり言って」


畳みかけて聞いてみる。


「本当に、今日は男性の同僚と飲んでいたんだ。好きな女性や付き合っている女性なんかいない。し・し・しいていえば、久恵ちゃんだよ」


「本当?」


「誓って」


「私、マンションでは妻ということになっているのでお忘れなく。浮気は絶対にダメ!」


私が続けさまに問い詰めるので、パパはすごく困った顔をしていたが、好きな女性は私と言ってくれたことがうれしかった。そして、浮気は絶対ダメといったら真顔になったけど嬉しそうだった。


でも、なんかいつもとちがう。お酒を飲んでいるからか、うきうきしているように見えるんだけど。なんていうか顔が緩んで満ち足りた感じ。お酒を飲んで、憂さ晴らしをしたから?


それから、パパは自分の部屋でスーツを脱いで、急いでお風呂に入った。怪しいと言われた匂いを消すため? まあいいかな、好きな女性は私と言ってくれたから、と部屋に戻った。


パパは女の人をほしくならないのかしら。ソープランドへでも行ってる? あの真面目なパパがありえない。


そういえば、2週間ほど前に、夜トイレに起きたら、パパの部屋から、うめき声のような音がするので、パパに何かあったのかなと、ノックして大丈夫と聞いたら、何でもない大丈夫と慌てた声が返ってきた。


心配なのでドアを開けると暗がりの中でテレビがついていたけど、パパは布団をかぶって寝ていた。あのときHビデオでも見ていたのかもしれない。気になるから、今度、パパのいない時にこっそり探してみよう。


次の日、夕食の準備が終わったので、ソファーで一休み。パパが帰るのは8時前後、まだ時間があるので、こっそりパパの部屋を探検することにした。


見られたくないものを隠すけど、ありそうな場所は大体想像がつく。プラスチックケースの中は工具。本棚の引出しの奥には貯金通帳と印鑑。クローゼットの棚の奥の方にプラスチックのケースが並んでいるのを発見。


DVDケースが20枚くらい、背中を向けてタイトルが見えないようにきちんと並べてある。ケースの写真を見るととても見ていられない恥ずかしいものばかり。でもどういう訳か、パパをいやらしいとは思わなかった。それよりやっぱりパパも男なのねと安心した。


私に見つからないように隠したんだ。知らないふりをしておこう。それより、時間を見つけてこっそり見てみたい。

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