第33話「出発前の諸々と、ステータス確認」


 光属性の魔術『光投槍ライトジャベリン』を何とか使えるようになった俺。

 小鬼こおに洞穴ほらあなのボス戦で間違いなくメインの攻撃手段となり得るこの術式を、1週間後の出発まで出来る限り練習することに決めた。


 術式発動までの時間を短縮するのはもちろん、走りながらでも発動できるようにしたり、時にはテオに手伝ってもらって攻撃をかわしながら発動できるようにしたりなど、敵から少し離れた場所からでも攻撃可能な『光投槍ライトジャベリン』を活かした立ち回りも訓練していく。


 動く魔物へと当てる練習も行ったが、俺がLVアップしてしまわないよう、練習回数は控えめにしておいた。






 また小鬼の洞穴に潜った際のドロップ品の売却金がそれなりに残っていたこともあり、テオと相談しながら、回復薬を中心にアイテムを多めに購入しておく。



「食料は……あ、まだこんなに残ってる……」


 食料品の在庫を確認しようと【収納アイテムボックス】の中身を確認した俺は、予想以上の残りっぷりに驚愕した。

 そこそこ食べるウォードや、大食らいのダガルガの分を考えても、手持ち食料で十分まかなえるだろう。


 この間はさすがに買いすぎたな……と、今になってちょっと反省。






 新たに装備品も新調した。


 先日ダンジョンボスから逃走した際、俺は愛用していたミスリルバックラーを落とし紛失してしまった。


 代わりを探すべく、テオとともに向かったのは職人街の中古防具店。

 以前『革の軽装鎧』を買ったお店だ。


 前回親切にしてくれたドワーフの女性店員にお願いし、色々な盾を見せてもらったところ、重さや形などがしっくりきたのはやはり、ずっと使っていた物と同じミスリル製の丸盾バックラー



「やっぱりミスリル製は軽くて丈夫ですから……これ使うと鉄とかには戻れなくなっちゃいますよね!」


 という女性店員の言葉にうなずきつつ、俺はミスリルバックラーの購入を決める。


 以前の物と微妙にデザインは違うけど持った時の感覚が近い、お手頃価格の1枚。

 リベンジまでの期間が短く、手に馴染ませている時間がもったいない今、俺がすぐに使いこなせるのはこれしか無いと思った。



 ちなみに元々愛用していた盾は、ダガルガに貰った物であった。

 エイバスの冒険者ギルドに戻った際、落としてしまったことを謝ると、ダガルガは「気にすんな! お前らが無事でよかったぜっ!」と笑って許してくれたのだった。





 新調した盾も装備した状態の、現在の俺の詳しいステータス――偽装なしのもの――がこちら。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

名前 タクト・テルハラ

種族 人間

称号 勇者、世界を渡りし者、神の加護を受けし者

状態 健康

LV 11


 ■基本能力■

HP/最大HP 124/62+62

MP/最大MP  74/37+37

物理攻撃  36+46

物理防御  12+34

魔術攻撃  29+29

魔術防御  11+26


 ■スキル■

光魔術LV1、剣術LV1、能力値倍化LV5★、収納アイテムボックスLV1、技能スキル習得心得LV1、鑑定LV1、神の助言LV1、言語自動翻訳LV1、攻略サイトLV1、偽装LV1、防御LV1、気配察知LV1


 ■装備■

手作りの片手剣:物理攻撃力+10、製作者の愛がたっぷりこもっている、とても丈夫で軽く初心者に最適な剣

ミスリルバックラー:物理&魔術防御力+15、軽くて丈夫なミスリル製

革の軽装鎧:物理防御力+7、軽くて動きやすい革製の鎧

布の服:一般的な布製の服

革のブーツ:一般的な革製のブーツ

ある旅人のマント:ある旅人が自分好みにこだわり製作したマント、【耐久加工LV3】【防汚加工LV3】

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 『ニルルクの究極天幕アルティマテント』の件で【耐久加工】【防汚加工】などの重要さに気付いた俺は、自分の愛用マントにもこの加工がついているのを思い出し喜んだ。

 ともに『LV3』の加工ということで、テント――LV5★加工付き――ほどではないものの、普通に使用しているぶんには汚れたり壊れたりしないする心配はないだろう。



 なおマントはこの2つの加工のおかげで汚れる心配が一切ないのだが、他の装備は別である。剣や盾だけでなく革製の鎧やブーツも時々手入れが必要であるし、布の服は普通に洗濯しなければならない。


 そんな中、エイバスの街を見て回っていた際、たまたま洋品店で、初期装備とそっくりで値段も安い布の服を見つけた。

 洗い替えとして、また破けた時の予備として、思い切って10セットまとめ買いしておいたため、現状はそれで十分間に合っている。


 ゲーム中では武器性能を最も重視、防具は『見た目重視・性能はそこそこでOK』派だった俺だが、安全第一で行きたい現在は、余裕が出来たらもっと良い防具を探したり、マントの性能を強化するカスタマイズをしたりしたいところだな




 なお旅を進めるにあたり、俺が勇者であることを隠すべく【偽装LV1】――自身のステータス項目を任意の内容に見せかけられるスキル――を利用し、『見習い剣士』に【偽装】していた。


 俺も訓練を重ねそれなりに強くなったことからテオと相談した結果、称号は“見習い”を外して普通の『剣士』に偽装することに。

 【能力値倍化LV5★】――常時全ての能力値が2倍するスキル――の影響で基本能力が非常に上昇していることからLVの調整値については少々迷ったが……『(偽装するLV)=(実際のLV)×2』ぐらいならば自然だろうとの結論になった。






 続いてテオの現在のステータスがこちら。


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名前 テオドーロ・コーディー

種族 人間

称号 吟遊詩人、器用貧乏

状態 健康

LV 38


 ■基本能力■

HP/最大HP 376/376

MP/最大MP 342/342

物理攻撃 151+36

物理防御  84+54

魔術攻撃 177+20

魔術防御  91+54


 ■スキル■

万能術LV5★、いばらの道LV5★、剣術LV1、槍術LV1、鞭術LV1、弓術LV1、投擲とうてき術LV1、火魔術LV1、水魔術LV1、風魔術LV1、土魔術LV1、魔術合成ハーモナイズLV1、魔術付与エンチャントLV1、加速LV1、隠密おんみつLV1、鑑定LV1、偽装LV1

(※以下全てLV1のスキル、多すぎるため略)


 ■装備■

シュミルの魔銀鞭ミスリルウィップ:物理攻撃力+36、魔術攻撃力+20、シュミル製作

ロゼリアーナハット&コートセット:物理&魔術防御力+54、ロゼリアーナ製作、【防護加工LV3】【耐久加工LV3】【防汚加工LV3】【防水加工LV3】【防燃加工LV3】

ミスリルイヤーカフ:ミスリル製のイヤーカフ

ミスリルネックレス:ミスリル製のネックレス

銀の懐中時計:銀製の懐中時計、【防水加工LV3】

魔法鞄マジカルバッグLV3:【収納アイテムボックスLV3】相当量の所有物を収納できる


(※以下、魔法鞄マジカルバッグ内の主な武器。状況により持ち替え可能。)

シュミルの魔銀短剣ミスリルダガー:物理攻撃力+45、魔術攻撃力+20、シュミル製作

シュミルの魔銀剣ミスリルソード:物理攻撃力+68、魔術攻撃力+20、シュミル製作

シュミルの魔銀槍ミスリルスピア:物理攻撃力+72、魔術攻撃力+20、シュミル製作

シュミルの魔銀弓ミスリルボウ:物理攻撃力+51、魔術攻撃力+20、シュミル製作

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 ハット&コートセットに付いている【防護加工】は、防具に魔力をまとわせることで防御機能をもたせる加工だ。

 ゲームでも、服系の高機能防具にはこの加工を施すのが必須となっている。




 お互いの戦力確認中。

 テオの装備欄の詳細を見た俺には、少々気になることがあった。


「テオ、このロゼリアーナハット&コートセットって、どこで手に入れたんだ?」

「ロゼリアーナ本人に直接依頼して、オーダーメイドで作ってもらったよ」

「えっ?!」




 製作者・ロゼリアーナは、ゲームにも名前が登場する服飾職人だ。

 細部やシルエットにこだわったデザインが持ち味で、ロゼリアーナの作った服を好んで着るプレイヤーも一定数存在していた。


 ただロゼリアーナ自身の姿を直接見たプレイヤーはおらず、どこに住んでいるのか、どういった外見なのか……等は一切謎に包まれている。

 さらに、その名前がついた服装備がほんの少量だけ市場に出回っていたり、仲間にしたキャラがたまたま装備していることでその存在を確認したりできるのみと、作品の流通自体も少ない。


 そのため一部の熱狂的なロゼリアーナブランドファンのプレイヤー達は、攻略サイト内プロジェクトの掲示板で情報を交換しつつ、その新たな作品を探し続けているのである。




 かつてのぞいた掲示板での熱いやり取りを思い出した俺は、テオの言葉に驚き、そして恐る恐る聞いてみる。


「そのロゼリアーナって……いったいどんな人なんだ?」

「う~ん、本人が隠したがってるからなぁ……俺の口からは言えないや!」

「そっか……」


 プレイヤー達が追い求める『秘密』の糸口の1つを、偶然知ってしまった俺。

 いつかその糸を辿ってみたいと好奇心をくすぐられるのであった。

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