小さな冒険者たち

天から降りてくる雨粒たち

小さな小さな傘を差して降りてくる

つぶらな瞳で初めての冒険に瞳を輝かせてる

ほら、もうすぐ水たまりに着地だよ


沢山の先輩たちが待っているアスファルト

しずくが大きくひとたまり

波紋たちが歌っているね

まるで重力の花が咲いたみたい


窓の中から覗いているのは

可愛い可愛い子猫ちゃん

いつもそこで僕たちを見ているね

何だか少し淋しそうだね


子供たちは僕らを見てはしゃいでる

楽しそうに楽しそうに遊んでる

大人たちはつまらなさそうな顔ばかり

僕らを避けて早足で過ぎていく


さああ さああ やさしくうたう

言葉に出来ないような繊細なしらべ

屋根を伝ってといに集められ

やがては遥かなる海への旅路へ


車たちが無慈悲に水溜りを引き裂いていく

大丈夫だよ いくらバラバラになったって

空からまたいくつもの僕たちが降りてくる

散らばった水たまりはまた大きなひとつに戻ってく


暗い暗い灰色の空

風のない静かな静かな世界

まるでどこまでもこの風景が続いていくみたいで

穏やかな沈黙が風景にゆっくりにじんでいく


どれだけ雨粒がたまっても

アスファルトのくぼみに満ちても

川の流れに変わる事もなく

そのまま雲は過ぎていくのだろう


大いなる母の元に辿りつく事無く

またもう一度空への旅が始まるだろう

猫たちや犬たちが僕らをなめていく

最後の雨粒がひときわ大きな波紋を描いて


いつしか空は晴れていた

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