第92話:エスカレートする話→ループする話

前回の続き。


話の構造としては、指数関数も含めて単に「エスカレートする話」という型に則った面白さでもある。これは落語やコメディ、民話や神話に普遍的に見られるし、ギャグ漫画でもよくある。


ユーモラスな掌編を書くなら、一度は使ってみたい型と言えそうである。


読者の興味を惹きやすく、話を進めやすい。そして綺麗な落ちさえあれば、すっきりとした掌編にもできそうである。


たとえば、わらしべ長者とか、世界の果てや死後の世界を質問する子供の話であるとか、両さんが新しい商売を始めるとか。



型としては、


「事態がエスカレートする → 落ち(意外で、しかも論理的に納得が出来て、感情的に素敵な結末)」


となればベストだが、最終的にループしてしまう型もある。


「事態がエスカレートする → 冒頭や原因に戻る」



事態が空間、時間的にループしてしまうというのは、おそらく星新一の影響下にある(つまり、ほとんどの)書き手が一度は考える手段である。


「時間ループもの」というサブジャンルができている以上、この手は使いにくい。しかし書く練習としては良いかもしれない。


場所のループは短編の一部に使われることもある。山本周五郎の短編で、城内である人物を探すエピソードがあった。


人物某はある部屋にさっきまでいましたよ、と言われてその部屋へ行くと、もうあっちの部屋へ行かれましたよ、と言われる。やがて追いかけているうちに最初の部屋に戻るという流れで、これは導入のエピソードとして優れている。コミカルで、場所と人間関係の説明にもなっていて、動きがある。しかも説明と思わせずに説明ができる。

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