第20話:あいうえお順タイトル列挙法

 これは自分で考えたつもりの方法だが、大した方法ではない。

 ただ「あいうえお順」に架空のタイトルを考えていって、そこから発展させてアイディアが生まれるかどうか、試しにやってみたことがある。


 当時(といっても半年ほど前)の記録が残っているので、参考例として挙げてみたい。


 ↓


 あ:赤い社会・・・明るい社会、赤い社会、愛社会、亜社会、など色々な社会が会話する。赤城あかりというアイドルがいて、赤城あかり社会というのもある。


 い:いつから知り合ったのか分からない人・・・考えていくと、うんと幼少期まで遡る。この話題って、何から流れたんだっけ?となることが時々ある。それと同じように、人もまた、いつから知り合ったのか判然としない人がいる。最終的に自分が生まれる時まで遡り、お父さんの知り合いではないかという結論。


 う:憂さ晴らしの反動期


 え:えっさかほいさか万能説


 お:同じ服・・・もし、凶悪事件の犯人と被害者の遺族が同じ服だったら、たいへん気まずい。ただでさえ気まずいのに。有名な映画や、有名な人物、小説に出てくる状況で考えてみるとどうか。


「ある人物とある人物が待ち合わせをして会った。ところが、一定の時間を共に過ごす(打ち合わせなど)筈だったのに、お互いが合意の上ですぐさま別れた。なぜか?」


 という問いかけにしてはどうか。ちょっとした推理クイズのようなものか。むしろ、長編の中の一部に使えるかもしれない。


 少し時間を置いてから考え直してみると、やはり推理クイズ程度の話だが、短編の中のどこかへアクセントとして入れることができそう。


 か:カバの食べ方・・・そもそもカバは食べられるのかどうか、それもよく分からないが、食べてみたいという人はいるかもしれない。


 き:金色の毛・・・金髪を集めた布団があったらどうか。


 く:燻製・・・鉛筆や消しゴムや、文房具を燻製にする。これは嵐山光三郎のエッセーであった気がする。


 け:ケチケチ生活の夏季休暇


 こ:こどもスマホアドバイスルーム・・・こども電話相談室が、今ではこうなっている。


 さ:騒ぎたい子供が行く地獄・・・モニターが沢山あって、自分が泣き喚く姿が映し出されている。実際に、そういう映像を見せると駄々っ子はどうなるのだろうか。犬はどうだろうか。


 し:死人に口なし・・・死人(死体)にこっそり隠しカメラや録音機をつける。死人に口なしというが、耳や目はあるというわけ。それで何が分かるか、好奇心からやってみる。葬儀社で働く人のひそかな楽しみ。


 す:すき焼きの譬え・・・何々君のいない教室は、まるで牛肉の入っていないすき焼きです。

 →これはもう少し発展できそう。地味な友達がいて、面白みがないのだが付き合いが続く。たまたま出張で近所に行くので会おうということになるが、行って見ると急死しており、帰るに帰れなくなる。そこで彼が無口だが、その生涯で何度も「まるで牛肉の入っていないすき焼きだ」という譬えを何度も使っていることを知る。


 せ:世界うそランキング・・・勝手に国別のランキングを作り、もっともらしい解説を行い、皆を感心させた人が勝ち。というゲーム。


 そ:ソングご飯:ある男女のグループが誘拐され、監禁される。歌を歌って、歌詞に出てきたものだけを食べることが出来るというルールで、本当に死にかけるので本気になってくる。


 ↓


 こんな調子である。

 中にはそこそこ面白い、これから発展して育つかもしれない種もあるが、まだ発想の種の段階としか言えず、海のものとも山のものともつかない断片、という印象を受ける。


 ほとんど断片の状態でも、原稿用紙1~3枚ほどの掌編にはなる可能性がある。

 この方法によって作ったメモから「これはそのままでも良いのでは?」と考えて、ほぼそのままメモを使った例として「『ね』が好きな女の子」がある。他に「悲しむ機械とのお別れ式」も同様。しかし、成果というほどの成果ではない。


「1を10にするのは簡単。0を1にするのは難しい」とよく言われるが、この方法だと、どうにかして0から0.5くらいの手がかりはできる。

 体調や精神状態によっては成功するし、失敗もするという感じである。


 何か大きなテーマを決めてから、あいうえお順に考えていく方が有効かもしれない。


 なかなか言葉が頭から出てこない場合は、辞書の助けを借りるとか、あいうえお順に飽きたらいろは順にするとか、できたタイトルを「あ段」「い段」など並べ直して、横同士で組み合わせてみるとか、応用はいろいろできそうである。

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