妹の友達と付き合うために必要なたった一つのもの

白瀬曜

prologue

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 それは、唐突に自覚された。

 おそらくずっと前からこの俺、柊弘人の中にあった一つの感情、あるいは嗜好は、しかし生まれてから実に16回目の年越しを迎える今この時まで、靄に包まれたその正体を露わにする事はなかった。

 だが、全てのピースは嵌った。

 気付いてしまえばもはやそうとしか思えない、むしろなぜこれまで気付かなかったのかと自分を嘲笑いたくなるほど明確な、それでいて今すぐにでも叫び出したくなるような激しい感情を、なんとか喉元で抑えつける。

 今は深夜の2時。何をするにしても、時刻として幾分遅すぎる。

 それでも、俺の中に生まれたこの熱は、一度意識を手放したらそれだけで消えてしまうような、そうでなくとも今よりは薄れてしまう気がしたから。

「よし、一筆書くとしようか」

 せめて決意を文字として残しておこうと、半紙と筆、そして墨汁を用意する。

 筆に墨を絡ませ、いざ一筆目。

「……駄目だ」

 線に魂が籠っていない。こんなものでは俺の決意を表すにはふさわしくない。

「駄目だ、駄目だ、駄目だ」

 二枚目も、三枚目も、四枚目も駄目。『女』の部分すら書き終える前に、次々と半紙を丸め、捨てていく。

「これは、長期戦になりそうだな……」

 いいだろう、望むところだ。完璧な一枚を書き終えるまでやってやろう。


 結局、どうにか納得のいく一枚が完成する頃には朝になっていた。

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