第26話 血縁
ミツキは、湯船に浸かりながら篠宮先生がなぜ自分を風呂にさそったのか考えていた。
まあ、頭の中で悩んでいるのは自分らしくない。
"いつも通りのあたしでいこう。"
「先生は、わたしに何か聞きたいことがあったんですか」
ちょうど体を洗っていた篠宮は、手を止めてミツキの方を向いた。
「そうねぇ、どうしてもと言うことでは、無いのだけれど私が昔、宮中にいた頃、あなたによく似た女性が知り合いにいて気になったからという理由でしか無いのよ、もちろんその知り合いは、わたしと同じくらいの歳だけど」
「わたしのお母さんは、昔、巫女だったみたいですよ。だから霊界師じゃ無いと思いますよ、宮中近くには住んでいたみたいですけど、あたしが小さい頃亡くなったようです」
「そうなの、私と同じだわ。だから私は、小さい頃から宮中ですごしたのよ。あなた雑賀と言っていたわね。おじいさんの名前は」
「雑賀ゲンシンです。昔、宮中で霊界師だったそうです」
「えっ、あなた雑賀師範のお孫さんなの」篠宮は、ひどく驚いた様子だった。
「ええ、そうです。おじいちゃんは、結構有名だったんですね」
「それは、そうよ、わたしの先生だもの」
「えっ、篠宮先生の!じゃあ御札が元に戻るのも教えてもらったんですか?」
「もちろん、基本の基本だからね」
と篠宮は笑って言った。
「ですよねーっ」
ミツキと篠宮は、結構打ち解けてきているようだった。お互い母親を知らないという境遇も関係あるのかもしれない。
「そう言えば、あなたのお父様は、どういう方かしら」
「そうですね。普通の人でした。怪我が原因で亡くなりましたけど、あまり怒られたことも誉められたこともなかったですね」
「そうなの、霊界師ではなかったの?」
「はい、武具屋の主人です、父親なのに印象が薄いのも変な話ですが」
「じゃあ、あなたは、今ひとりなのね、寂しく無いの?」
「寂しいですけど、今は、イオリがいますから、あいつは、危なっかしいのでわたしが見張って無いとダメなんですよ」
「ふふっ、やっぱり仲がいいのね」
「そ、そんなんじゃ、ありません」
「わかったわ、そろそろ戻りましょうか。イオリさんを放っておくと危険ですからね」と言って篠宮は、嬉しそうに笑った。
「絶対わかってませんよね、先生……」
ミツキと篠宮は、風呂から上がりミツキは、イオリの部屋に向かったのだった。
「どうだった、ミツキっ」
「先生は、着やせするタイプだった。」
「ちがうだろっ!誰が先生のプロポーションの調査を依頼したんだよ」
「何を話したかってこと?」
「ああ、ミツキに何か聞きたいような感じだったから」
「そうだね、主にあたしの身の上話かなっ、主におじいちゃんとお母さんの話だったような」
「へえーっ、それって単に雑談だよな、なんか理由があるのかな」
「うん、宮中にあたしに似た知り合いがいたからみたいだよ」
「そんな、綺麗な人が知り合いに……」
「今のは、わざとだよね。あたしのマッハパンチをくらえっ!」
あんな綺麗な妹がいるのに白々しいにもほどがある。女のあたしですら最初見たときルリの姿に心を奪われたのだから……
でも、あたしは、イオリのそばにいられるからいいや、とミツキが思った時だった。
「け、結界に反応がありました、お気を付け下さい、侵入者です!」
やはり屋敷の結界は、その為のものだったようだ。
どうやら俺達は、当たりを引いたらしい。
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