第16話 確信

「やっと帰って来れたね」

 ミツキは、くたびれた様子で言った。小村丸の屋敷に着いたのだ。

 先を急いだせいでミツキとルリには結構無理をさせたと思う。


 門番に話しかけ俺達は、屋敷の中に入った。

 座敷で待っていると小村丸がやって来た。ルリとユリネは、あらためて姿勢を正した。


「霊界師の小村丸と申します。今日は、宮中より書簡をお持ち頂いたそうで」

「お初にお目にかかります。佐々木ソウゲンの娘ルリと申します。この度は、小村丸先生にお力添えを頂きたく宮中よりご紹介頂き参った次第にございます。」

 ルリは、キチリと挨拶をした。


「まあそう畏まらずに話を致しましょう。ねえイオリ殿」小村丸は、俺を見てニヤリと笑った。


「先生は、もうおおよその見当は付いてますよね。」

「霊界師派遣の話くらいですが…」相変わらずお見通しだ。

 ルリは、宮中からの書簡を手渡した。

「ルリ様この件、確かに承りました。同行する者には伝えてありますので」

「えっ、まだ何も……」

「あなた方が来ることはわかっていましたから」

 小村丸は、俺とミツキが初めて来た時と同じセリフを言った。


 今日は、皆屋敷に泊まることになり先にルリとユリネは、部屋で休むことになった。


「さて、わたしの依頼の件ですが」


 俺とミツキは、宮中での出来事を小村丸に報告した。


「なるほど、封印が解かれたとすれば事態は深刻ですね。

 途中であなた方を襲った忍者連中も絡んでいるのでしょう。

 そして宮中も味方ではありません。書簡の件イオリ殿は、分かっておられますね。」


「ええ、ルリが預かった書簡の行の最初の文字を読むと『はきみてきづな』となります、ただこれでは意味がわかりません。その後の一文の『皆むごい死に』を数字に変えて見ると3765142となりこれを『はきみてきづな』に当てはめ最初の文字から数えて該当する番号の文字を読むことで意味が繋がります。つまり最初の文字は、初めから3番目の『み』次は7番目の『な』というように。

 結果『みなづきはてき』となりこれに怯えているのだと考えられます。」


「『みなづきはてき』って、『水無月は敵』っていうこと、宮中の師範が!」ミツキが驚いて言った。


「おそらく二ノ宮は、何か知っているのでしょう。ただ話せば命に関わるのだと思います。」

 小村丸は、落胆した様子で言った。


 おそらく宮中は、封印が解かれたことを隠ぺいしょうとしたのではなく、封印そのものを意図的に解いたと考えられるからだ。そしてどうやら師範代の水無月は、その事に大きく関わっているらしい。


「イオリ殿、あらためてお願いがあるのですが……」

 と小村丸は切り出した。

 今回の小村丸の話は、俺自身にも関係するようだ。ただあまりにも難しい話だ。

 俺が断ろうとしたその時


「やります、任せて下さい。」

 ミツキだった。


「お前また勝手に……」


「先生だって人を出してくれるんだよ。だったらお返ししないと」


 しまった小村丸にはめられたようだ。

 俺は小村丸がミツキを同席させた本当の理由に気付いたのだった。


 小村丸先生は、いたずらが成功した子供のように嬉しそうに会心の笑みを浮かべていた。

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