第14話 凡人の王

 霧の悪魔が倒されてから1年後のことだった。

 創世の悪魔は4人とも倒されて、王国は平和そのものだった。

 

 しかし、月の女王が死亡したことにより王が決まらない日が続いた。

 さらには数ヶ月前から騎士も行方知れずになっていた。

 

 そんな時、国に魔女を名乗る人物が訪れた。

 魔女は自分のことを何もない魔女と触れ回っていた。

 王が不在だったことや、魔女が人に危害を加えなかったことから王国魔法士団も手を出さなかった。

 団長となっていたフロンスもあまり快く思っていなかったが、様子を見ることにした。


 それから1ヶ月ほどたった頃だったか、騎士が国に帰ってきた。

 彼は前よりも魔力の感受性が増していたが、やはり魔法は使えなかった。

 騎士は戻ってくるとすぐに違和感を感じた。


 フロンスの元へ向かうと、フロンスから事情を聞いた。

 魔女の話を聞いた騎士はすぐに魔女の元へ向かおうとしたが、フロンスが止めた。

 フロンスは騎士の魔力の感受性の強さから魔女の黒い魔力に耐えきれないと考えたのだ。


 騎士はフロンスが止めるのも聞かず魔女の元へと向かったが、ついに戻ることはなかった。


 フロンスは騎士の仇を取るため魔女の元へと向かった。

 すると、魔女の元には黒い魔力に当てられた市民たちが、魔女を次の王に立てようと画策していた。

 フロンス自身は月の女王ほどの魔力は持ち合わせていないし、騎士ほど強い魔力の感受性もなかった。

 二人に比べれば凡人だが、魔女と戦うにはちょうどよかった。


 魔女は相手の魔力を吸うことで強くなるが、フロンスは魔力の扱いに長けているだけで、大した魔力を持ち合わせていないし、黒い魔力に当てられるほど感受性もない。

 だからこそ、魔女に打ち勝つことが出来たのだ。


 魔女は倒された時に、凡人が王になることがこの国にとっては運命なんだなと呟いた。

 そして、消える前には、ゼロの魔女は何度でも蘇ると叫んだという。


 そうして、フロンスは操られていた人々を解放し、讃えられた。

 それから、王として国民に認められ、初めて凡人の王となった。

 彼が王である間は決して騎士を選ばなかった。

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