第12話 火の騎士

 悪魔信仰が進む世界で唯一悪魔を信仰する者がいない村があった。

 村に名前はないが、よみがえりの民の末裔でよみがえりの一族と呼ばれている。

 かつての英雄グラキエスを排出した村であり、災厄の魔王テネブラエを生み出した村だ。

 この時代では約束の谷を悪魔様の聖地であるという者がおり、悪魔崇拝者が毎日のように束になって押しかけてきた。

 それを見ていた3人の若者がいた。

 2人の名はそれぞれ名をルナ、フロンスというが、もう1人の名前がわからない。

 そのため最後の一人は、村の者からはルナと並ぶ者ソルと呼ばれていた。


 ルナとソルは毎日約束の丘に行き、魔法の訓練をする。そこに時々フロンスが混ざり3人で修行しることもあった。

 ルナとソルは魔法帝を目指していたが、ソルは自分に魔法の才能がないことを薄々感じていた。

 いつまでたっても魔法が使えないソルに対して、2人は何も言わずに一緒に切磋琢磨し続けた。

 しかし、その日々も長く続かず、フロンスは王都に行かなけれならなくなった。


 何年か月日が流れ、ソルは商人の息子であったため王都に行くようになり、フロンスの所在を探したが見つからない。

 仕事がない時は、いつものようにソルとルナの2人で魔法の訓練をし、ルナとは恋仲になりより2人で魔法帝をめざす。

 それでも、ソルは魔法に関する感受性が増すばかりで、魔法はうまく使えなかった。

 今のままではダメだと思い、王都に行く間には剣術の訓練を始める。

 魔法が待っく出来ないソルだったが、剣術においては頭角を現した。

 その頃、ルナは魔法帝へとスカウトされていた。


 ルナが魔法帝候補になってからは、ソルはさらに剣術に磨きをかけた。

 世界は一つの方向へと向かっている。

 だが、悪魔教の活動も活発化しており、誰もが悪魔の鼓動を感じた。


 それから数年後には、新たな魔法帝が生まれた。

 名をルナ帝といい月の女王の称号が与えられた。

 彼女が魔法帝になった年はいつにも比べ悪魔教の活発が大きく、いまにも反乱が起きてしまいそうな程であった。

 彼女の対となる騎士の不在が大きな要因だ。

 なんとか1人で悪魔教を抑えた彼女は、国の人々からはとても慕われていた。


 その頃ソルは騎士になるための試練に挑もうとしていた。

 試練は約束の谷の東にある火の山なやある火の騎士の墓で行われることとなっていた。

 ソルが墓に着くとすぐに試練は行われるようになったが、難なく試練を終え、聖剣の主として認められた。

 しかし、悪魔教が大勢詰め掛けてきて、儀式を始めた。

 追い払う間も無く、儀式が終わってしまった。

 儀式が終わると火の山に封印されていた悪魔が蘇った。

 その悪魔は創世の悪魔の1人であるイグニスという火の悪魔だった。


 イグニスは復活するとともに敵味方関係なく近くにいるものを燃やしはじめた。

 イグニスは動きも速く誰も剣を当てることも出来ない程であった。

 しかし、ソルに限ってはそうではなかった。

 彼の剣は音よりも速く、イグニスの動きに対等についていける唯一の人間と言っても過言ではなかった。

 実力的にはイグニスの方が少し上で、さらには他の者たちを守りながら戦うソルは不利であった。

 2人の戦いは1週間にもおよび、最後は精神力によりソルがイグニスを討ち取ったが、ソルは体力の消耗により立ち上がるれず、倒れ込んでしまった。


 倒れたまま王都に運ばれたソルは、イグニスを倒したことから火の騎士の再来と言われ、火の騎士の称号を正式に受け継いだ。

 そうしてようやく王都の将軍の地位を与えられ、ルナ帝と並び立つ存在となった。

 久しぶりに再会した2人は熱い抱擁をし、約束を守れなかったソルは申し訳なさそうにしたが、ルナ帝はその約束よりも一緒に居られることをよろこんだ。

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