第30話 エルフ温泉につれてって③

 エルフの森は、想像以上に大きな森だった。

 さまざまな木々が豊かに生い茂り、その恩恵を受けた小動物たちの走り回る様子が至る所で見受けられた。


「よし、まずは街に行って情報収集からだ」


「「「「「イエス!ファンタジスタ!」」」」」

 なんだよ、ファンタジスタって、この世界にないだろサッカー!

 しかし、エルフの森に来てみんなテンションが、異常にあがっているようだ。

 俺もみんなの事は、言えないけど……


「なあ、誰かエルフの街の事、知ってる奴いるか?スンナリ中に入れるのかな」


「門の所に、検査機があるみたいだ。そこで危険なもののチェックがあるらしいぞ」


「グライド、やけに詳しいな」


「ああ、ガイドブックを買ったからな」


 グライドは、『エルフの森のファンタジスタ』と言う本を俺に見せた。

 これかっ!さっきのファンタジスタ!


「しかし、ガイドブック持ってくるなんて、ちょっと笑えるよな。観光じゃないんだからさ」

 と言って俺は、みんなの方を向いた。

 アリサ以外の全員が、慌てて何かを後ろにかくした。


「タ、タケル、そ、そんなことは、無いと思うぞ。事前にじ、情報を集める事は…」

 アレ、何だかリンカが、グライドをかばっているような気がする。

 怪しい……


 結局、全員が同じ本を持っていた……

 お前ら、どんだけ楽しみにしてきたんだよ!


「ヒナ、ちょっとその本貸してくれるか」

「いいけど、折ってあるとこ戻さないでよ、お兄ちゃん」

 俺は、まさかと思い、他の奴らを見た。

 全員が、目を逸らした。

 グライドもかよ……


 なになに、『エルフの森のファンタジスタ』著者 冒険王 アレ……


 アリサは、やはり目を逸らしていた。


 ガイドブックには、街の入り方から案内、チートの実の獲得方法まで書いてあった。


「おいっ、チートの実の獲得方法って……」


「そう、お兄様、チートの実は簡単に手に入らない」

 そ、そんなバカなっ、こんな事って……

 俺は、現実に打ちのめされる思いだった。


 そ、そうだもうひとつ重要な目的があったよな。俺は、該当のページに目を走らせた。

 ふう、温泉は、問題ないようだ。

 剣の素材の話はどうした、俺!


「ともかく行ってみないと話にならないな、今回は、みんなの力を借りないと無理だと思うよ」


「あたしは、タケルの為に全力で頑張るよ」

 ありがとうなメルっ、とても不安だけど……


 他のみんなも、頷いていた。

 ありがとうみんな!


 ついに、エルフの門に辿りついた俺たちは、

 検査とやらを受けるため係員らしき人に話しかけた。


「すいません。街に入りたいんですが」


 俺の声にこちらを向いた係員は、メガネをかけた女性のエルフだった。この世界のエルフは、ほぼ想像通りの姿でまったくのブレがなかった。端正な顔立ちをしており背格好も人間と同じで何より耳が尖っていた。

 髪の色は、人によって違うみたいだ。


 係員は、ちらっとメルの方を見ると話しかけてきた。


「そちらの銀髪の女の子は、エルフかしら」


「いえ、あたしは、ただの死神……」

 俺は、メルの口を塞いだ。


「ただの人間ですが、何か?」

 俺が、メルを羽交いじめにしながら言った


「そう、ごめんなさい、髪の色も銀髪だし何だか私たちに近い魔力を感じたから」

 何だか気になる言い方するな、この人。


 ひとまず俺達は、順番に検査を受ける事になった。

 検査機は、空港でよく見かけるアーチ型のものだった。

 武器を先に預けた俺達は、順番にゲートをくぐっていった。


 だが、最後のグライドで検査機が、激しく反応した。

 まさか、魔王軍に、反応する機能があるのか?

 いや、だとすればヒナがすんなり通れた事がおかしい。グライドが何か隠し持っているのか!


 原因は、王冠でした…


 呪いの王冠は、危険な物として装置に反応したのでした。


 係員も首をひねっていたが、結局、王冠の先が尖っているせいだろうという事で処理をする事になった。

 わりと、適当でよかったなと俺は思った。


 そして、ついに俺達パーティは、エルフの街に足を踏み入れたのだった。

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