【 夢一夜 】

わたしを 深い土の中に葬ってください

黒い土をかぶせて 小石を置いて それが墓標

暗い森の中で わたしは土に還っていく

朽果てた肉体が 小さな骨になった頃


黄色い蝶々に わたしは生まれ変わる

春の風に運ばれて あなたの肩にそっと止まろう

愛しい人の温もりに しばしの逢瀬を夢みる

やがて強い風に 蝶々は吹き飛ばされ消えてしまう


輪廻転生 わたしは生まれ変わる

夕暮れの街の雑踏 小さな仔猫が捨てられていた

道行く人混み中に 歩くあなたを見つけて

仔猫は鳴いた 叫んだ なのにあなたには届かない


また春が訪れ 公園の片隅に可憐なスミレが咲いた

いつもあなたと遊んだ この公園でわたしは待っている

友人とボール遊びを楽しむ 転がったボールさがして

あなたの靴に スミレは踏まれてしまった……


幾度 生まれ変わったとしても

あなたとわたしは 一緒になれない運命


そんな 悲しい夢をみた




   ※ この詩は夏目漱石の「夢十夜」からインスパイアされて書いた詩です。

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