ヲタサーの姫と従者(ひとり)
@bdm
第1話みんとあじかってきて
「ミント味のガム、買ってきてよ」
トランプのババ抜きの途中で、見た目中学生の少女に、青みがかった色のツインテールの髪をゆらゆら揺らしながら命令された。彼女はキロ。実年齢21歳と聞いたときは驚いた。まぁ、大学のゼミが同じという時点で、俺よりも年下の可能性なんてかなり低いとは検討がつく、それでも当初は驚いたものだ。ちなみにキロは一年浪人しているから、俺と同じ二回生だが、年齢はひとつ上になる。
「どの種類?」
キロのぱしりには慣れているので、文句すら出ない。
「いや、だからミント味だって」
少し怒ったような調子で返された。さすがに、二人きりでババ抜き三本勝負はお気に召さなかったらしい。まぁ、言い出したのは、もちろんキロだったのだが。こちらも慣れで、文句すら出てこない。
「あー、いや、どの商品がいいのかなーって、そういう意味で」
普通に、極めて平常心を保ったままで質問を返す。
「だーかーらー、ミント! ミントのガム! はい、もう締め切り! これ以上の質問はうけつけない!」
「だからどれ! ミントのガムにも何種類かあるだろ! それを言えってんだよ!」
前言撤回。慣れててもムカつくものはムカつく。だって人間だもの。
「バカ! ミントっつたらあれしかないでしょ! あのー、ほら・・・・・・、あれよ、あれ!」
詩的に自己完結させたところで、キロには通じなかったらしい。まぁ、思っただけだから、共感もクソも無いけどね。つーか・・・・・・。
「出てねーじゃん! 商品名! くっそうろ覚えかよ! このにわかミント!」
思ったままの罵詈雑言が口から飛び出す。言ってから後悔。キロを傷つけたかもとか、さすがに言い過ぎたとか、そういった種類の後悔ではない。むしろ、キロに対しては言い過ぎなんてことは起きようはずもなかった。じゃあ、後悔の理由はなにか?簡単なことだ。
「こンのクソヲタが! もっぺん言ってミロ! ザリガニ脳が! ちょーしこいてんじゃにゃッ・・・・・・、ねーぞ!!」
そう言ってキロは、持っていたトランプをこちらに向かって思いきり投げた。カードだから物質的ダメージは皆無だけど、精神的ダメージはかなり大きい。え、ザリガニ脳?泣きそうなんだけど?暴言をちょっと噛んじゃう所、茶目っ気があって可愛いな、とはならない。なら・・・・・・、ない!
後悔の理由。逆襲がでかいから。以上。泣きそう。
誰だ?この「顔は」良い娘をこんな風に育てやがったのは?思ってからまた後悔。だって、この娘を、このお姫様をこんな風にしてしまったのは、誰の目にも明らかすぎるほど明らかに、他ならぬ、俺自身なのだから・・・・・・。
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