初めてのVRMMORPGからの生き直し、39歳から始まる第二の人生
穴の空いた靴下
第1話 全てが壊れた日
高校の卒業式が終わって、皆と別れを惜しんだり、友人たちと馬鹿をやって過ごしたが、他のやつらは新しい生活のための準備もあるので、だんだん俺は暇をもてあますようになった。
大学受験は失敗した。
母親は俺が小さい頃、正直ほとんど覚えていない頃に亡くなっている。
父親は母親と始めたペットショップを守りながら必死に俺を育ててくれた。
たぶん、周りの奴らに比べると控えめだったと思うけど、反抗した時期もあった。
それでもやっぱり、父親のことは嫌いにはなれない、恥ずかしいけど、まぁ、尊敬していた。
俺の進路も、父親が冗談交じりで言った。
「獣医師にでもなってくれれば助かるんだが……」
ってのを真に受けて、獣医学部がある大学を目指して俺なりには頑張ったつもりだったんだけど……結果は全滅。
浪人してまで狙えるほどの熱意もなく、親の仕事手伝っていくかなーなんてもやもやしながら、春休み、すでにそんなくくりは無いんだけど、その時間を無為に過ごしていた。
全てが変わったのはそんな時だった。
ゴロゴロと寝っ転がりながらスマートフォンでソーシャルゲームを周回しながら携帯ゲームを片手に漫画を読んでいる。つまりいつもどおりの事をしている時に突然降り注いできた。
ドカーン!
凄まじい音と衝撃が家の裏から響いてきた。
「な、なに!! 何が起きたん!?」
心臓が止まるかと思った。すぐに部屋を飛び出し、階段を駆け下りた。
慌てて靴を履いて外に飛び出すと、人の叫び声が家の反対側から聞こえてくる。
急いで家に戻り裏側の『店舗』に向かおうと扉を開けると、すでに家の中は黒煙で満たされていた。
「な、なんだゲッホゲホ!」
開いた扉から溢れ出す黒煙に巻かれてむせ返ってしまった。
反射的に扉を閉めて門の外に這いずりだす。
頭の中は現状起こっていることに全く追いついていない。
一つだけ、親父の店がヤバイ! ってのだけは理解した。
呼吸が整った俺は駆け出していた。
大きく道を回り込んで、アーケード側に出るためにだ。
人の逃げ惑う恐怖に溢れた声が俺の心臓をより一層高鳴らせた。
「親父!!」
アーケード側、店舗前に広がる光景は、地獄だった。
横転したタンクローリー車、それにぶつかってひしゃげている車。
燃え上がるアーケードの店舗たち。
親父のペットショップの目の前、そこに地獄が広がっていた。
一番激しく燃え広がっているのが親父の店だった。
「あ……な、なん……何だよこれ……」
俺は全身から血の気が引いて、思わずそこにひざまづいてしまった……
「危ないぞ!! 早く離れろ! 爆発する!!」
いきなり大きな影が俺に突っ込んできて俺を抱えて走り出していた。
「は、離せ! なにするんだよ!! 親父が、親父がーーーー!!」
俺は何がなんだかわからず、抱えられたままアーケードの角を曲がった瞬間。
凄まじい爆音と衝撃が俺と、俺を抱きかかえて人を弾き飛ばした。
……そこで俺は、意識を失ってしまった。
次に目を覚ますと、真っ白な天井が見えた。
辺りをバタバタと動き回る人がする。
だんだん意識がはっきりすると、全身が激しく傷んだ。
しかし、身体が思うように動かせなかった。
なんとか目の端で体の状態を見ると、気絶しそうになった。
ミイラ男の用に包帯が巻かれ、何本もの管が俺の腕などから出ている。
「あ、うお! うあぁ!! ああああああ!!!」
そこからはよく覚えていない、たぶん暴れた俺をなだめようとしてくれた人もいたが、俺の興奮は治まることが無いために、薬か何かで眠らされたんだと思う。
再び目を覚ますと、同じ天井が広がっている。
俺も、さっきのは夢なんじゃないかと目を動かすと、相変わらずミイラ男だし管はつながっていた。
それでも、なにかモヤがかかったように興奮は起こらずに、自分の現状を冷静に見つめていた。冷静に見つめていたが、頭の中は何が起きたのかわからなくて混乱していた。
ふと気がつくと、自分の名前さえも上手く出てこない。
落ち着かせるんだ。
自分に言い聞かすように強く思う。
俺の名前は
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