りけじょ! の奇妙な日常【1】

憮然野郎

たいむかぷせる


科学部の部室。


真智

「ねえ、みんな?

あたしから提案があるんだけど!」


四葉

「え~? 何かなぁ~?」


「真智、もったい付けないで早く教えろよ~!」


真智

「え~とね、

あたし達今年で卒業でしょ?

だから思い出にタイムカプセルに宝物を埋めたいの!

ね、みんなでどうかな?」


四葉

「真智ちゃん~?

タイムカプセルはイワンくんと愛理栖ちゃんが

いなくなる前に埋めに行ったよね~?」


真智

「そうだね。

でも、その時はまだ宙がいなかったし、

あたし、また新たに埋めたい宝物が見つかったし!」


四葉

「そうだね~。じゃあ、私もまたタイムカプセルに埋めたい大切なもの

また探してみるね~」


真智

「ありがとう、四葉ちゃん。


宙も埋めるよね?」


「いきなり言われてもなぁ……。

うち帰ってから探してみるな」


真智

「宙もありがとう。

谷先生もお願いしていいですか?」


谷先生

「まあ……いいが、

そのタイムカプセルはいつ埋めるつもりなんや?」


真智

「次、みんなが集まれるのは金曜日だから、

それまでにみんな用意してきてね!」


谷先生・四葉・宙

「おう!」

「は~い」

「ほ~い」



そして、金曜日。


真智

「ねえ、みんな?

どんな宝物持って来た?


あ、四葉ちゃんは何を埋めるの?」


四葉

「先に真智ちゃんが埋める宝物が知りたいわ~」


「そうだぜ~。真智言い出しっぺだろ?」


真智

「わかったよ~。

あたしは、これ!」


「何だこれ? ただの軽石じゃないか」


谷先生

「ちょっと待て! 真智?

このフラクタル構造の石はどうやって手に入れたんや……!?」


真智

「宙も含めてみんなで高次元世界に行った時ありましたよね?」


谷先生

「ああ」


真智

「あのとき拾ったんです」


谷先生

「みつけたって真智……あれはVRの人工プログラムや!

あり得ん。でも、ちょい待ちや。

もしこのうちらの世界が仮に……」


真智

「今は難しい話はよしましょうよ!

ところで、谷先生はどんなものを埋めるんですか?」


谷先生

「うちか? うちはこれや」



真智

「あの……先生? これ、何ですか?」


谷先生

「これか? これは メカニカルMOD,

電子タバコや」


真智

「わ~! そんな風にいじると変化するんですね!

なんか凄いですね!

あたしにも触らせてください!」


谷先生

「あっ、こら! そんな勝手にいじるな!

それ、扱い方間違えると、ホンマ爆発するんやで!」


真智

「え~! やだ~! 宙パス!」


「あたいに投げんなや!」


真智

「わ~、四葉ちゃん、パ……」

四葉

「真智ちゃ~ん?

まさかとは思うけど、

私に投げないよね~?

投げたりしないでしょ~?

投げたりしないと言って?

まさか投げないよね?

ねえ?

言えっつってんだろ!!

投げないよな?」


真智

「は、はい……私めの命に変えても致しません」

真智 心の台詞

(怖い。こうなったときの四葉ちゃんって本当マジでぱねぇ……)


「ところでさ~、四葉はどんなもの埋めるんだ?」


四葉

「私~? 私はこれ~」


真智

「それ、スイカの種だよね?

どうしてそんなもの埋めるの?」


四葉

「実はね~、これは去年の夏に谷先生の差し入れ

で部室でみんなで食べた思い出のスイカの種なんだよ~」


谷先生

「四葉?お前大丈夫か?

スイカの種って普通、食べるとき反射的に吐き出して捨てるやろ?」


四葉

「まぁ~、実は重要な目的がもう一つあるからなんですよ~。


土に埋めた時に、上手く行けばまたスイカに育って

食料になるかもしれないし~!」


真智

「四葉ちゃん?

家計の事情はわかるんだけどね。

せめて、食料って言う夢の無い言い方……

やめよ」


四葉

「ところでね~、宙ちゃんはどんなの埋めるの~?」


「あたいか? あたいは、これ」


真智

「宙が今両手で大事そうに持ってるの何?

プラスチックで出来た人形のようだけど」


「順を追って話すからまあまて真智。


あたいのオヤジな、

貿易商の仕事をしていて世界中を飛び回り

一年を通して家にいることが少ないんだ。


それで、あたいがまだ幼い頃、

あたしが寂しく無いようにっていつも

プレゼントを送ってくれていたんだ。


その中でも一番あたいがお気に入りだったものが

オヤジがアメリカから送ってくれたこのターザン人形なんだ」


真智

「へ~!

そうだったんだ!」


「んでな、

これはあたいの大切なお守りでいつも枕元に置いて寝たんだ。

寂しい時、辛い時、悲しい事があった時、いつも、

この人形が夢に出てきてあたいを励ましてくれたんだ」


谷先生

「イイハナシダナー。


ところで 宙?

その人形ちょっとうちに貸してみ?」


「は、はい」


谷先生

「スイッチがあるな」

『ポチっとな!』


『アアァァァ~!!』


真智・四葉・宙・谷先生

「…………!!!!」


あろうことか、

ターザンのオモチャは

『アアァァァ~!!』

そう叫びながら、

谷先生のほうを向いて

右手の軸をチ●コ付近に据え激しく上下に動かし始めたのだ!


谷先生

「こ、こ、こ、コイツ……。

な、何てすば…ゴホン!

何てけしからん オモチャや!


宙ほら、この人形返すわ!」


「おっととと。

谷先生?」


谷先生

「なんや……?」


「どうしてあたい等から顔そらすんですか?」


谷先生

「知らん!!」


「谷先生?

今……、顔赤く無いっスか?」


真智・四葉

「谷先生、急にどうしちゃったんですか?」



谷先生

「そ、そ、その人形は、

き、き、危険すぎる……」


真智・四葉・宙

「はい??

どうしてですか?」


谷先生

「……」


真智

「答えてくださいよ~!

ねえ、谷先生~!?」


谷先生

「お前らにはまだ早い。

この人形は危ないから没収や。

うち、今ごっつ腹痛いわ~。

すまん。トイレ行ってくる!」



『トントン!』

真智

「谷先生~! お腹大丈夫ですか~!!」


谷先生はその後、

その人形を持ってトイレに立てこもったきり、なかなか戻って来ませんでした。

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