私は私を褒めてあげたい
私は私を褒めてあげたい。
今まで一度も、突然「会いたい」なんて言ったことなかった。
どんなに仕事がつらくても君への恋心を募らせても、君の生活リズムを崩すことが無いようにしてきた。
でもどうしてもしんどくて、今日は土曜だし君が一人で家にいるのを知っていたから連絡してしまった。案の定、既読は付かなかった。深夜を過ぎて耐えられなくなり、私はそのメッセージを送信取消した。
「メッセージの送信を取り消しました」
そしてメッセージを重ねた。
「ごめん!間違えた!」
次の日君から話したいことがあると言われ、お昼に会うことになった。電話でと言われたが、嫌な予感しかしなかったから恵比寿まで行った。君は連絡には気づいていたけど、君も何か考えていることがあって返信しなかったそうだ。メンヘラみたいにメッセージを取り消すんじゃなかった。
要は、この関係の継続について考えたいという話だった。
最近デートはマンネリだし、正直たまにセックスもうまくいかない。私に要望されているスキンシップや言葉での愛情表現は相変わらず苦手だし、負担に感じている。目の前の仕事が忙しくて結婚なんて考えられないのに、私は30歳までにしたいと言い出す。要は、私がその年齢で結婚したいと本気で思っているなら、この関係は終わりということのようだった。
私は感情的にならず、冷静に課題を整理した。
「つまり問題は」
切り分けると3つ。結婚のこと、マンネリのこと、愛情表現のこと。
結婚は私の問題で、君の問題じゃない。もし私が本当に結婚したかったら、君と別れて結婚相手を探すから、先回りして別れるなんていうことを君は考えなくていい。
マンネリについては、お互いアイディアを持ち寄ろう。
愛情表現は、具体的にできそうなラインとできないラインを決めよう。お互いの妥協点を探ればいいと思う。
一息にそこまで話す。
(私は私を褒めてあげたい)
冷静な自分を褒めてあげたい。
本当は。
君と結婚したいし、結婚という制度で縛っておきたいほど私を愛おしく思って欲しい。
私はマンネリだと感じたことはなく、週に1回君に会えることを糧に毎日生きている。
愛情表現の要望なんてしなくたって、触れたくなったり好きだと言いたくなったりして欲しい。
(そもそも)
会いたいと言っただけでなぜこんなことになったんだろう。
暗黙のルールに縛られて、触れるのも怖くて、いつから恋愛はこんなに辛いものになったんだろう。
君を好きな感情を、減らしたい。
こんなにも一方的に好きなのは、しんどい。
(それでも)
それでもここで泣いたら、それこそ君の心は離れるだろう。
だから私は冷静に、頑張るしかないのだ。
ねえ。
もし私が30歳までに結婚したいと譲らなかったら、君は”私のためを思って”この関係を終わらせたの?
そんなの優しさなんかじゃないよ。勝手に責任を感じるくせに切り捨てられる、その程度の愛だよ。
以前付き合っていた彼女とは結婚を考えていたこともあると聞いた。結局目の前の問題が山積みでも、結婚したい相手なら結婚したいものだということを私は知っている。
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