第202話 性なんだ・悪気はないよ・選ぶ気も

 さがなんだ、悪気はないよ、選ぶ気も。

 朝の一句である。


 バイト先で、忘れ物のパンティが風呂場にあった時の話だ。


「やっぱり嬉しいものなの?」

 バイト先のパートのおばちゃんが聞いてくる。

「うん…嬉しいと言えば少し違います」

「またまた」

「いや、誰が履いていたかにもよるし…そもそもパンティそのものに執着があるわけでもないです」

「○○さんのだったら嬉しいってこと」

「嬉しいというか…なんか違います」

「どういうこと?」


 説明は難しいのだ。

 例えば下着泥棒には2種類いると思っている。

 純粋に『下着』に執着するタイプと、特定の人の下着に執着しているタイプだ。

 前者はフェチであり、後者は『好意』だ。


「…その差」

「街でさ、綺麗な人の下着が見えたら見るでしょ?」

「見ますよ、でも綺麗とかは関係ない」

「ブスでもデブでも見るの?」


 見るといえば見るのだ。

 それは目で追うという意味だ。

 恐竜が動くものを目で追うのと一緒、本能だ。


 そして見るというのは違う。

 見えたが正しい。

 わざわざ見に行ったら痴漢である。


「…だから嬉しいかどうかは、そのあとで感じることなんです」

 見たいと見えたは違うのだ。


 だから選ぶ気はないのである。

 あと…下着を忘れるな。

 迷惑だから。


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