時の抄

あゝ悠久の昔より 無限に時は流れゆく

その泡沫うたかた一滴ひとしずく 尊い人生極むなり


月は変わりて星移り 人は生まれて去り逝くも

変わらぬ相天地を 貫くものは因果律


蒔いたる種は皆生える 生える姿は種どうり

伏せたる種は萬倍ぞ 晒せば生えぬ実ものらぬ


今年の種は今年刈る 少なき量ぞ気を長く

桃栗三年柿八年 梅はすいすい十三年


万物皆に性のあり 時に流れに陰と陽

午前の時は陽にして 午後の時には総て陰


この身の内に十二穴 大きな骨は十二本

十二ヶ月で1ヶ年 十二刻で一日ぞ


時の始まりねえと言う 十二で終わり又元へ

春夏秋冬去りゆかば 六十年で還るなり


子は丑のうても寅れんぞ 卯んは辰って巳は午れ

羊念せ申な酉てもな 犬で亥るなり天の徳



子年生まれはこそこそと 細かい事に気が付いて

無駄使いせず綺麗好き 経済観念旺盛ぞ


志士先覚の丑の年 辛抱強く根気よく

言葉少なく押し強く 腹の立つ時止められず


強情我慢寅の年 考え深く落ち着いて

人の頭に立つけれど 目上の者に吠えたがる


にこにこ顔の卯年かな お世辞と愛敬降り撒いて

人気福徳あるけれど 色の為には苦労する


義侠と短気の辰の年 人に立てられ威勢良く

思わぬ人にひいきされ 負けず嫌いで損をする


美人の多い巳の年よ 心の奥の深くして

金に一生不自由なく 執念疑い深き性


おっちょこちょいの午の年 調子宜しく間にも合い

陽気ばかりで根気なく 上辺飾るが損のもと


味のあるのが羊年 人を憐れみ品も良く

芸はあれども高ぶらず くよくよ思うが臆病ぞ


駆け引き要領申の年 才知に長けて器用なり

上手に人の機嫌とる 誉められたさに嘘も付く


ばたばた暮らす酉の年 あれやこれやと忙しく

働きながら世を送る 気変わり多く夢も抱く


言葉の偏屈戌の年 礼儀を守りて正直に

人の為には陰もなく 骨折り損を多くする


決まりの良いのが亥の年で 大望貫く気性あり

後先見ずに気が早く 負けず嫌いが損のもと

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