最終節 癒えぬ傷と……そして、 First_Code.
パーク・セントラル強襲より――数日。
ある程度の修復作業が、現在も尚行われていた。
だが、その後の戦いによる二次災害もまた、悲惨なものだった。
セントラルが小規模で破壊を受けてしまっていたのだ。
更には病院が襲撃され、カコは意識不明の状態へと陥った。
パークの中核であるカコを失った穴は大きく、パークの重要責任者の居なくなった後の再建は中々に困難を極めていた。
未だセントラルの修復は遠い目標のままだ。
更に、フレンズ側でも色々と問題を抱えていた。
今回の戦いで、フレンズ達は数体が負傷し、緊急的な病院にて救護を要されていた。
徐々に回復の傾向に向かっているとは言え、病院の修理は急務とされている。
集客が望めなくなった現状ではあったが、各国政府からの援助の介もあり、何とか踏みとどまっている状態だった。
そして。
「はぁ……参っちゃいました」
ミライは、頭を抱えていた。
今後のジャパリパークをどのように為れば良いか。
彼女もパークの一員として、懸命に頭を悩ませていたのだ。
周りから見ればまた何かしら怪しい事を行おうとしているのでは無いかという懸念に見えて仕方が無い。
だが。
「そうです!!」
バンッ!! と机を叩き立ち上がった彼女。それを見て回りの職員はビクッと身体を震わせた。
何を言い出すかと躊躇いながらに、彼女を見つめていると……。
「園長を連れて来ましょう!!」
「「「「「「………………………………??」」」」」」
誰もが首を傾げた。
園長など、パークに居ないだろ、と誰もが言いたげだったが、それよりも先に、
「じゃあちょっと行ってきます!!」
「え、あ、ミライ調査長?!」
彼女は事務所を飛び出した。
*
オイナリサマは、一人山中の神社の縁側に腰掛けていた。
彼女の手元には、円形の水晶体のような、虫眼鏡のレンズ板にも似たネックレスが手の中に在った。
「何処かで見たような気がするんですよね……、でも、何でしたっけ?」
首を傾げウンウンッと頭を悩ませる。
だが、そうして。
「……でも、もしかしたら、パークを救う手がかりになるかも知れませんね」
彼女は、ネックレスを太陽に向けて、中を覗く。
ガラス板を通して見える太陽は、キラキラと眩しいくらいに輝いていた。
*
世界中でも、パークのニュースは取り上げられた。
崩壊するかと思われたパークは、フレンズ達によって護られたと、栄誉的な報道が各国を流れた。だが、それに対する被害を見た嘗ての来場客は、各々が寄付金を投入した。
パークの復活を願い、多くの人々はいつかのパークの復興を願っていたのだ。
だが。
パークは世界中で取り上げられた大ニュースだ。
それこそ、各国の政府や企業がこぞって援助を行った。
だが、それでも、彼等はふと首を傾げ疑問に思うだろう。
『そう言えば、パークの責任者は誰だった?』
誰も、知らない。
居ないのだから。
*
サバンナ地方。
そこで、サーバルは平原の中で倒れ込み、項垂れていた。
「うみゃぁ~……疲れたぁ~」
激しく動いた訳でも無いのに、何処かヘトヘトになる程に疲弊していた。
日照りの熱さでも無く、長距離の移動を行った訳でも無かった。
だが。
突如。
「え?」
サーバルは自分の上に覆い被さる影を見た。
「う、うみゃぁぁぁぁぁぁっっ!?!?」
突然セルリアンが、彼女を襲ったのだ。
だが、彼女はジタバタッと暴れ回った後に、セルリアンは何かを満足したかのように彼女を放り何処かへ行ってしまった。
「う、うみゃぁぁ……もう疲れたよぉ……zzZ」
*
何処かの森林。
その奥に、謎の地があるという。
其処は、嘗て四人の研究員がこの島に降り立ち、このパークを創るに至ったという伝説が密かに流れている。
事実かどうかは定かでは無い。
だが、その発祥の地が森林の中にある、開けた場所のコンテナだという。
今や、その場所はツルが満ち、廃墟と化したコンテナが二つ。
その場所に近づこうとする者は居らず、誰も使わない廃コンテナ。
割れたガラス窓から、フゥッと一陣の風が中にはいる。
木の葉が中へと入り込み、事務所の中の一つの机の上にこぼれ落ちた。
四人の研究員の事務所の中にある、仲間外れのように設置された、一つの誕生日席のような机。
木の葉は、その上で優しく揺れる。
そして、その木の葉の側には、青い羽根が挟まれた一冊の本が置かれていた。
風は寂しく吹き荒び、木々の葉を抜けた日光の輝きが、コンテナの中を照らす。
そして、その机に設置された椅子の上には、一つの白衣が掛けられていた。
――今は無き騒音が、周りに響き渡るように。
そして……、再び一陣の風が吹き荒び、木の葉が天へと飛ばされた。
*
その物語の全貌は、永遠に隠された。
誰も、その時代を知らない。
誰も、その、最大の功労者の存在を知らなかった。
この物語は、
――原初にして、始まりである。
そこには、苦労と挫折があった。
多くの苦しみと、痛みを背負いながらに、時代の波に翻弄され続け、運命の中心へと投げ出された少年が居た。
少年は孰れ、子供で居る事を辞めさせられ、その背中に世界は重大な重荷を乗せ続けた。
だが、それでも。
少年は、最期に安堵を得た。
奇蹟でも、希望でも、願いでも無い。
明日への安堵を。
そして、少年は表舞台を去る。
舞台裏へと身を潜め、壇上を降り、彼は消えた。
今はもう、彼は居ない。
その功労でさえ、忘恩となり、誰も思い出す事は無い。
そう。
これは。
世界の命運も、一つの国の運命も、その全てに手を伸ばし、救い上げた。
今という時代を創り上げた、今は亡き栄光の話。
――そして、始まりに至る物語。
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