第1332話「無理難題」

午前十一時の工場。

改善要望をまとめた資料を眺める担当者と営業が現れた。

顧客は改善要望(一般人が想定する納品後にアフターサービスのていで提出される仕様変更書を指す言葉。だったら最初から仕様に盛り込んでほしいというのが正直なところである)というよりもずっと無茶で最悪な酷い要求を出してきていたのだが、割と無自覚な様子であり、たとえ意図的な無自覚であろうとも少額できれば無償で対応するのが社長の方針だった。分かりました、と応える営業は、納期について尋ねる。一週間。一週間、で終わるはずがない量だった。担当者は心の中で泣いた。

だがいきなり長いレールガンを持った女子高生がやってきて、とにかくすごい攻撃で担当者の感情をなくした。

改善要望から読み取ったお客様の心を反映させろという上司の言葉を汲んで努力した担当者だったが、心を失った彼は顧客の心など分かるはずもなく、ただただ改善要望を反映させUIに改良を施した修正版を期日に提出した。顧客からの評判は大変に良かったが、急ごしらえの改修を今後の量産に対応した形へ再反映させるには最終的に生産コストが高くなりすぎたため採用されなかった。

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