第1282話「ゴミ」
午後七時の河原。
野焼きをしている老人と少年が現れた。
おもちゃの車は幼馴染(一般人が想定する昔から親しい間柄にあった人間同士を指す言葉。少年の幼馴染に該当するのはとある少女であり、一年前に東京へ引っ越していった)よりもずっと少年に大切にされたがっていたらしい。だって必ず持っていくと約束したのに、元々少女の家だった場所から焦げたそれが出てきたのだ。火事を逃れた物を勝手に盗んでくるのは悪いことだと分かっていたけれど、我慢できなかった。彼が大切にしていた、そして幼馴染の少女に贈ったはずのそれがボロボロの状態で出てきたものだから、不思議でならなかった。忘れていったのかもしれない。少年の為に置いていったとか。そうでなければおかしい。少年は少女の家の番号を調べ、電話を掛けた。
だが少年が名乗ると、いきなり電話を取った相手が無言のままとにかくすごい勢いで受話器を叩きつけた。切断音が耳に響いた。
ああ、仲良しだと思っていたのは自分だけだったのだな、と幼心に少年は理解した。少年は祖父に頼み、大切だったおもちゃの車を焼いた。
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