【64】侵蝕(2)
──
己のせいではないのかと。
──距離が遠いままだったのは、俺の方だった。
心を見せないままでいたのは
そう思えば、
要は、心は要らないと思いながらも、心がここにないと感じて傷ついた。もっと傷つきたくなくて、避けた。──それだけのこと。
クスリと笑った
「またお会いできる日を、楽しみにしていますね」
それは、
そうしてふたりは時間の許す限りゆっくりと城下町を歩き、
三日後。
部屋に入れば、
それは、
「これで、諦めがつくでしょう?」
受け取るしかない
目を疑っても、信じたくなくても、
両想いなんて、奇跡だ。奇跡が起こるなんて信じていない。誰かに愛してもらえるとも、思っていない。
愛は幻想だ。愛がなくても子が授かることもあるし、無事に生まれることもある。本能に身を任せればいいだけのこと。
そう、それでいい。
一喜一憂するような、心なんて要らない。
愛がなくても子が授かれればいいし、無事に生まれてくれればいい。
いや、果たさなければならないことで。
答えは、決まっている。
けれど、
「いいえ、諦めません。次は、自分で選ぶと……母上も了承してくださったでしょう?」
絶句する
「俺には……」
静かに閉まる、扉の音。
『俺には、『保険』があるのですよね?』
『保険』──それは、
例えるならそれは、
どう伝えるか悩めば悩むほど、
そんな夜を何度か過ごしたある日のこと。
とけた余熱を残したまま、
「ねえ、
感情を押し殺したような声。
週に一回、多くても二回だったことが、二回、三回と間隔が短くなり増えてくれば、おかしいと感じて当然。
「そうだね。……断られなければ」
断定しない答えは、相手に委ねた答えは、卑怯だ。
けれど、それを指摘できる
「
ストレートな言葉を投げた手前、
話題を引き下げない
「どうして?」
質問の真意を探られ、
言いにくいことを聞いたあとだ。なんでもないと話を流せないのだろう。
これまでも
だからこそ、
責められたと感じれば、人は責め返したくなってしまう。
ふと、
「もし……もしよ? そうなら、
「まだ、してないよ」
サラリと
フワリと部屋を包むのは、沈黙。この返事では、
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