【23】誕生日
──こんな重さに、少し慣れたな。
「おめでとう」
突如、背後からかかった声に振り返れば、
「さんきゅ」
大臣に聞いたのかと訊ねると、
「何か、言いたそうだな」
「別に」
言葉と裏腹に、機嫌の悪そうな声。
「
「何を?」
「俺たちが『男』で産まれたこと」
「俺は『女』に産まれたかったと思ったことは、一度もない」
「俺もだ」
「心配してくれてるんだ?」
ただし、
それで、
予想は当たったのか。
「万が一があっても……
息子として産まれた当人同士。祖母も母も、かわいがって愛してくれたと分かち合ってきた仲だ。
「
「やめろ、気色悪い!」
喜びのあまりに抱きついた
「
「当然だ」
言い捨てるように
「どこ行くんだ?」
「帰る」
「もう少しくらい、ゆっくりしていればいいのに。すぐに帰るなんて、寂しいじゃん?」
「
「じゃあ、一緒に来ればよかった」
二言目にはその名を口にすると、
「それだと……お前に言うだけで帰るなんて、できないだろ」
変わらず
その態度に
「そっか。
と、笑みが戻る。
ふと、
「うるさい。それと俺について来るな」
ピタリと
「はいはい、まったね~」
何とも軽い口調で
慌ただしい日々は駆け足で過ぎていき、およそ一ヶ月が経った。新しい年を迎え、祝いの行事が続く中、新年の祝いとはどこか雰囲気が異なる一日。
閉ざされた城内では、内々の祝い事が始まる。──のだが、祝いの場に足を踏み入れた
「どうしたの?」
ほんわりとした
「は~い、はいはい。さぁさぁ、主役が座ってくれなきゃ始まんないんだからさ」
上機嫌に
準備が整ったとばかりに
「これはさ、大臣の趣味?」
「い~じゃん。誰の案だとしても、俺はうれしいよ。
「それは光栄です。おふたりが一緒にこの日を迎えられるのは、本当に久しぶりですからね」
感慨深そうに大臣は言う。
「俺は『誕生の日』として迎えるのが、久しぶりだけど……」
「そ~なの?」
「ああ、何でもない」
余計なことを言ったというように、流す。けれど、
「お兄様、そうなの! 私、婚約後もしばらく知らなかった」
それを見て、今度は
「お前さ、『唯一の肉親』である俺に、も~少しくらいやさしく接しても……い~んじゃねぇ?」
ふと、
「ねぇ?」
反応を得られない
「
「お姉様、確かに。
「へぇ~、好きな子には意地悪しかできないような不器用さんですかぁ」
好き勝手に言われていた
「誰が……俺がいつ、
「
「気色悪い。やめろ」
「
と、悲しみを漂わせる。
幼さがまとう声に、
「お兄様にも……やさしくして?」
そんな様子を見ていた
「
「後半?」
「そんなことはない」
ここぞとばかりに
「あ~! ほら、またぁ……」
「気を付けます」
婚約前に戻ったかのような口調で
「変わらず皆様、仲がよろしいですね」
おだやかに笑うのは、大臣。
「はい。では、おふたりの二十六歳の誕生日を祝って」
と微笑む。
「乾杯」
五人はグラスを高々にあげ、ともに笑う。
皆の笑い声のように、グラスは上品に音を立て合った。
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