【78】告白(1)
翌日、
「お帰りなさい」
「ただいま」
「要点だけ、報告をいくつかしてもいい?」
遠慮がちに聞く
研究所内に入れば見える、壁から飛び出た半立体の彫刻を通り過ぎ、廊下まで来た。広がっていた視界が狭まり、六人ほどが一列で歩けそうな廊下を位置も確認せずに感覚だけで進んでいく。ふたりにとっては、なじみ深い生家。見慣れた景色と、二十年という月日を刻んできた空気に安心しきっている。
けれど、
彼女は好んでそうしている。それが、彼女の幸せだから。
一方の
業務の報告が一通り終わると、
想定していたことに、
ふと、妙な間が空いた。
「どうしたの?」
「え?」
けれど、あのときの話はそれで終わっていて。この六年間、それまでの十四年間のままの関係で過ごしてきた。互いの気持ちは、わかっている。賢い
すると、
「あ、あのね……」
と、焦っているように口を開く。だからこそ、
「うん?」
と、聞いていると示唆できる程度の相槌を打つに終わって。
よほど言いにくいのか、
「
『相談』──その発言にすっかり不安は吹き飛び、
「いいよ」
『自室でもいい?』と
バタバタとして、どのくらいが経ったか。
だが、この数ヶ月で──
「座って」
と声をかける。奥に歩いて行き、ティーポットとカップを取り出す。
数分もしないうちに、室内はアップルティーの香りで満たされる。いつしか、
「はい」
案の定、
──
どうしたのかを聞きたいと思いながらも、急かすことはなく。じっと待つ。同じく、アップルティーを一口、また一口と飲みながら。彼女のペースがあると、
「あのね、
そもそも、いつから
──ああ、でも、そうかも。
と妙に納得したのは、過去生を見てきたせいで。
──ふたりは、過去生では夫婦だった。
こんなにしっくりくる事実はない。だからこそ、迂闊にもクスリと笑ってしまう。
「ご、ごめんね。こんなときにこんな相談。でも、突然で……どう答えたらいいのか、わからなくて」
うつむく
「笑ってごめんね」
と謝る。悪気がなかったのは、
そう、怖いのかもしれない。
人見知りが激しくて、
「一番大切なのは、
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