【62】女帝
忘れもしない、
あれは、
「ここを、今日から使用しなさい」
と告げたにも関わらず、当の本人には生気が感じられず。
焦った
「ちょっと、このまま待ちなさい。……待っているのよ!」
と、返事のない
「ほら、どう? この子とか、この子とか……いえ、この子がいいかしら!」
次々に見合い写真を
「母上」
ようやく
「お願いがあります」
今の今まで、
「な、何かしら?」
引きつる
その笑顔に向けられる、無表情の瞳。
「
きょとんとしていたら、再び
「い、いいわ」
ただ、
「何よ。いいわよって言ったのよ? 聞こえなかったかしら」
フンと視線を背け、乱れた髪を、服を気にする。
こんな状態になっても、
「いいえ、きちんと聞こえました。……ありがとうございます」
頭を下げた
「やめなさい。貴男は
「ただし。あまり待たせるようなことは、しないでちょうだいね」
鼻を鳴らして部屋を出る。優雅に、扇子を仰ぎながら。
あのとき、
国のことは
国王になる
ひとつ、難を上げるなら、火遊びをしすぎただろうということで。
ひとつ、難を上げるなら、待たされたということで。
いや、そのくらいのこと、
国務だけでも手が回らないのに、子育てをふたりいっぺんになど到底できない。けれど、嫡男には、後継者としての自覚を持ってもらわなければ意味がない。二男に野心を持たれても意味がない。
それなのに、
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