悲嘆にくれる王女
夜。
自らの部屋に女騎士を呼び出した王女は、その足で隣の寝室へと移動する。
王族の寝室は高位の限られた召使いを除けば親兄弟しか入ること許されぬ場所である。そこに通されるほどなので、これは一大事だと女騎士は悟る。まず真っ先に思い当たるのは見合いであった。
「見合いの席で何事かございましたか」
王女は黙ってうつむいたまま、無作法にも自らの隣をぽんぽん叩く。女騎士は苦笑しながらも王女の隣へと腰を下ろす。
ベッドに並んで座ると、女騎士の大きさが浮き彫りになる。王女の頭は頂点でさえ女騎士の鼻あたりまでしかない。
王女は女騎士に寄りかかる。瞳に涙を溜めながら、泣くのを堪えながら見合いの席でのことを話す。
「さすがにもう少しまともな人が来ると思っていました。何ですかあれは。大人ですらないではないですか」
女騎士は何とも言えず、励まそうとはするのだが上手くいかない。
「大丈夫、子供と言えどもきっといけます」
「さすがにそれは論理的に無理でしょう」
いつも元気に溢れ、理路整然とした王女の話も、今宵ばかりは要領を得ないことばかり。
愚痴をこぼすのは当たり前、感情が限界を超えてからはもう泣いてばかりで話もままならない。
「女騎士は私を愛していないの!?」
見かねた女騎士は王女の手を取ると、自らの頬に押し当てその甲にキスをする。
目には、決意。
「愛する人の涙に、どうして私が冷静でいられましょう」
翌日の夜、二人は手を取って城から逃げ出した。
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