第26話

「なにがですか?」


その答えで充分だった。


あの二人があまりにもいつもどおりなので、飛燕には清武の質問の意味がわからなかったのだ。


その後、特に会話もなくぼんやりとすごしていると、二人が同時に帰ってきた。


別々の方向からそろって現れるとは、やはり気があっているということか。


三人で見張り兼火の番についての話し合いが行なわれ、最初は飛燕が務めることになった。


九時きっかりに魁斗が言った。


「よーし、良い子は寝る時間だぞ、皆の衆。寝るべ、寝るべ」


「魁斗、話があるわ」


「なんだよ」


「襲わないでよね」


「金もらっても、誰がおまえなんか襲うかよ」


そう言った後、魁斗と紫苑は横になり、気づけば二人ともすでに寝息をたてていた。


――まったく、面白い連中だ。


そういう清武も、いつしか眠りについた。



「朝だ、あーさーだー。起きろーーっ」


ばかでかい声で起こされた。魁斗の声だ。


周りを見れば、いまは真夏なのにまだ暗い。


「ちょっと。早起きったって、いくらなんでも早すぎるんじゃないの。まだ四時よ」


「九時に寝たから、四時なら七時間寝たことになるぜ。充分だろう」


「途中、二時間以上見張りをしてたわよ」


「そんな小さなことを気にしていたら、大物になれないぜ」


「そんな大事なことを気にしないようなバカには、なりたくないわ」


「なんだと、この。この俺がバカだって言いたいのか」


「そうよ。どこから見ても、バカそのものじゃないの」

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