第5話 女子力高い男子はホモにも人気?

 向こうでは女子が集まって体力測定をしている。もちろん、こっちに集まっている、むさくるしい男達でもそうだ。


 一ノ倉さんがあまり運動は得意ではないのは知っている。


 体力測定と聞いて憂鬱そうにしていたっけ。


 しかし、上門さんがどうなのかは知らない。もしかして、運動は苦手だったりして。


 先生が生徒から離れて行く。


 百メートル走だろうか。


 相原、伊藤と、名前順で三番目の上門が次に走る。


 クラウチングスタートのポーズをとる上門。


 笛の音が鳴り、スタートする。


 上門は俺の予想を遥かに上回った。


 その走るフォームはスポーツ選手のそれのようで、美しく、運動音痴などとは口が裂けても言えるものではなかった。


 皆、無意識にそんな上門の走りを目で追ってしまう。


 上門の何かに取り組む時の目はいつも、真剣なのだ。だからこうして、どんなことも、常人以上の成果を出せるのだろう。


☆☆☆


 四時間目の授業が終わり、開口一番に敷町は言う。


「食堂行こうぜ、折乃」


 だが、そんな敷町に、見せびらかすように弁当を机の上にだす。


「手作りだ。すごいだろ?」


 昨日、変な時間帯に寝てしまったせいで、早く起きてしまったのだ。


 暇つぶしに何か出来ることはないかと考えた末、手作り弁当ができた。


「キモ」


 上門はドヤ顔でそう言った折乃を一言で、一刀両断する。


「うおい!キモいとは聞き捨てならないな。女子力高い男はモテると本で読んだことがあるぞ!」


「女子力高い男も嫌いじゃないぜ!」


 目を輝かせて言う敷町には悪いが、俺にとってはお前が一番キモいぜ……。


「できれば、そのセリフは女子に言ってもらいたかったな!」


「一ノ倉さん、私と一緒にご飯食べない?」


 それにしても、宣言通り、アプローチが激しい。


 これは負けてはいられない……!!


「お、俺と一緒にご飯食べない?一ノ倉さん」


 一ノ倉が勉強か読書のときにだけ身に着ける、眼鏡を外す。


「私はお弁当持ってないから、食堂に行くわ」


「じゃあ、俺も食堂で食うよ」


 弁当を片手に追いかける。


「別に教室で一人、ぼっち飯でもいいのよ」


 口に手を当てププーと笑う上門がとてつもなくうざい。


 こんな日々が続くのかと思うと、頭が痛い……。

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