Ep.2

 木造築の天井が見えた。


 なにか暖かいものでくるまれている。ぼくは、白い毛布のようなものに包まれ、小さな病室のような場所で目が覚めた。


 どこか田舎のような風景が窓から見える。ぼくは「ああァ」と天国にいるかのような心地よい快感に包まれた。


 ぼくは、ようやく許されたのだと思った。


 あの永遠ともいえる苦しみから解放されたのだ。ぼくは、再び寝返ろうとした――体が動かない。


 もしかして、まだ地獄にいるのか? と、ぼくは両手を上げてみようと動かした。動かない?


(まさか…まだあの牢獄のなかにいるのか!?)


 戸惑っていると、そこに見知らぬ学生の服を着た男が入ってきた。白衣を着た男と一緒に。


 ――おそらく白衣の男は医者だろう。名札もそう書かれていたので気づくのに数秒かかったが、わかった。


 もう一人の男の方は、知らない人だ。


 とても親し気に医者と話している。ぼくに近づき、男から発した内容でようやく現状を理解できた。


「気づいたようだね、よかったー! 一次はどうなるかと思ったよ」


 戸惑うぼくは、医者の横にいる男がぼくの頭の右あたりにあるイスを取り出し、順に説明した。



 男の名は伊達(だて)迅(しゅん)。


 ぼくは、帰りの自転車で迅と一緒に駅へ向かっている最中、包丁を握った男にぼくへ向かって襲いかかってきたそうだ。


 男はぼくに両腕足を切り付けその場から逃走したと。そのときのぼくは意識を失っており、慌ただしい出血をしていたという。迅は病院へ急ぎ連絡し連れて行ってくれた。


 けど、助かる見込みは両腕足を切り落とさないと厳しい状況だと医者に言われたそうだが、最新の技術を用いてそうしなくて済むという話に至ったそうだ。


 けど、治療にして完治するまで長く時間はかかるという。もしかしたら障害が残るかもしれないと出たのだが、親も迅もショックで倒れるよりは長くかかってもいいというので、こうしてもらったらしい。


 結果、ぼくは最新の技術で長い時間がかかったものの、3か月という期間で負傷していた腕脚は完治したようだ。


「よかった、よかったよ」


 迅は泣いていた。ぼくの両手を握りしめ、暖かい手で握ってくれていた。ぼくも自然と泣けてきて「ありがとう」と繰り返していた。


 少しして、両親も心配してぼくに駆け寄り、その日は病院で寝て、明日退院するということになった。


 ぼくは安堵していたが、かつての苦い記憶を取り戻し、現在の記憶はあやふやになっていた。


 親や医者、友達にばれないようにしていたが、見知らぬ人の名前や趣味、会話が出る度に焦った。


 医者がまだ回復していないかもしれないと、記憶に障害が出たのかもしれないとフォローしてくれたが、“前世の記憶がある”なんて言ったら、さらにややこしいことになるような気がして言えなかった。


 その日は、病室で寝る――ただ、それだけで過ごしていた。


 ある能力が目覚めるまでは――。


「」

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