私の中の短編集

釉月

1-1

「何してるの?」


尋ねられたのだろうか。


冷たいアスファルトの上に寝転がり、空の移り変わりを見つめていた彼は意識を声のした方へと向けた。


それは夕日と間違えそうな朝日が昇り始めた時間。


黒から紫、赤紫からオレンジに変わろうとしている早朝だった。


「ねえ、何してるの?」


何も答えない彼に向かって声の主はもう一度尋ねた。


ぼんやりとした意識と視界を集中させ、彼は自分を見下ろしている声の主の姿を捉えようとした。


声の主は少女のようだった。


カラスのように黒く、宝石のような艶を帯びた少しくせ毛のある長髪。


汚れを知らなさそうな白のノースリーブワンピース。


少女が身に着けているものはそれだけだった。


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