運動会 2
何度かの練習を経て、運動会当日となった。
空には薄く雲がでているが
今日はとても特別だ。グラウンドにはロープが張られ、保護者の方々が朝早くから場所取りをしている。
色とりどりのピクニックシートが敷かれ、最前列にはカメラを構えた親御さん達が並ぶ。なかには脚立に一眼レフといった気合いの入った方も居た。我々がすでに登校してきた時には、この取材団はすでに存在していた。いったいいつ頃から待ち構えていたんだろうか。
そんな保護者が待ち受ける中、いよいよ入場行進となった。
我々は校舎の裏手からまず1年生が出発をし、2年生、3年生とそれに続く。
低学年の生徒は先生に言われたとおり、手を精一杯大きく広げ、足を高く上げて、元気いっぱいに行進をする。いささか大げさに見える行進だが、この年頃の子供達がこういった仕草をするだけで、かわいらしく見える。そして4年生、5年生と続き、いよいよ我々の番が来た。
我々も手を大きく振る様に指導はされているのだが、この年頃になると恥ずかしさが出てくるようで、すこし小ぶりな動作になってしまう。
6年生になり、みな背が高くなってきたのだが、私の身長は頭一つ分は突き出ていて注目を集めているような気がして気恥ずかしい。視線を避けるように背筋は丸まり、あまり良い行進はできなかった。
グラウンドをわざわざ大回りに一周し保護者の方々に見せつけるように行進をした後でいつもの朝礼の形に整列をする。
おきまりの開会式が始まる。選手宣誓に始まり、校長先生の話がつづく。
晴れ舞台の校長先生は、この日の為に用意したいつもより長目の演説をするのだが、保護者の方も含めあまり頭に入ってこない様子だ。やはり誰にでもこの手の話しは退屈なようだ。
後半は少しダレてしまったが、無事に開会式が終わり、それぞれのクラスは紅組と青組に別れていよいよ競技が始まる。ちなみに、紅白でなくこの様な色分けなのかは誰も分らないらしい。そういえば私が子供の頃もこの色分けだった気がする、なにかしらの伝統なのかもしれない。
まずは低学年の競技が始まる。ただしそれは二人三脚や、オタマでピンポン玉のリレーなどといった競技というには荒々しさが微塵も感じられないようなものだった。競技はかわいらしいが、やっている本人達は真剣そのものだ。無理矢理に早く事を済ませようとすればするほど失敗をするようだ。そして一度しくじると焦りが生じて更なる失敗を招いてしまう。中でもムカデ競走などは一度失敗するとなかなか立て直しが難しいらしく何度もつんのめっては転んでいた。
しかしたとえ失敗をしても保護者をふくめ辺りは笑顔に包まれる、そのようなほのぼのとしたほほえましい演目が続いた。
5年生のダンスの演目が始まる。右や左に手をふったり、くるりと回るようなジャンプをしたりと息をつく暇もなく踊りが変わっていく。
……あの振り付けは私には覚えられそうにない。
やがて6年生の番となり、組み体操が披露される。
私は本番には参加しないのだが、
組み体操は難易度の低い倒立に始まり、サボテン、扇など次から次へと技が繰り出される。
ところどころで小さな失敗はあったのだがケガをする者もなく演目が終了した。
無事に終わった安堵感から、おおきな吐息が漏れる。気がつくと拳を強く握っていたようで、手の平には爪の跡が残っていた。
そして勝敗の発表になった、不思議なことにダンスや組み体操といった競技にも勝敗と得点があり、なんらかの基準で採点されるらしい。ここまでで我ら青組は156点、対する紅組は178点と、やや劣勢なのだが、どういった得点がでるのだろうか。
しばらく職員用のテントで協議がひらかれ、結果は我々の勝ちで20点の加算となり、176点対178点と
だが、よく考えてみれば組み体操などで点数を出すことは不可能に思える。この点数は大人の都合によって付けられて、勝負を白熱させる演出の為だけにあるのかもしれない。
余計な事を考えてくると、待機場所にクラスメイト達が戻ってきた。その姿はどことなく誇らしげに見える。負けていた1組はさぞ気落ちしているのかと思ったのだが、様子を見るとそうでも無いらしい。この競技は勝ち負けより達成感の方が勝るらしい。
組み体操の演目が終り、午前中のプログラムが終る。
そして昼食となった。
本日は日曜なので、給食はなく、各自が持参した弁当をひろげる事となる。
ここでも競技に似た争いが起こってしまう。
戦いの合間の昼飯くらいはゆっくりと食べたいものだ。
午後のプログラムは競技らしい種目が待ち構えている。
ここからが運動会の本番かもしれない。
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