第1019話 『戦争レクイエム 作品66』 ブリテン

 20世紀のレクイエムといいますと、フォレ先生の流れを引く、デュルフレ先生のレクイエム(1947)や、ポピュラー音楽にも接近している、ラター先生のまだ比較的新しい、レクイエム(1985)などが、名高いですし、人気がありますが、どちらも、優しい、慰め度が高い作品です。


 一方、たいへん、厳しい内容をもつ、辛辣なレクイエムとなると、やはり、ブリテン先生(1913~1976)の『戦争レクイエム』が、圧倒的に重たいです。


 ディーリアス先生のレクイエムは、第1次大戦の犠牲者を念頭に書かれたのに対して、こちらは、それも含め、第2次大戦の犠牲者に捧げられた感じが強いです。


 本来、1940年のナチスドイツの空爆にさらされた、コヴェントリーの街にあり、破壊された大聖堂、~築500年以上の歴史があったそうですが、こちらの新しい大聖堂の献堂式の為の作品として書かれた作品。


 1962年のことで、やましんは、すでに、この世にいました。


 歌詞は、カトリックのレクイエムのテキストのなかに、第1次大戦で、わずか、25歳で戦死した、オーウェンさまの詩を挟み込んでおりまして、ラテン語と英語のサンドイッチです。


 そのぶん、長くなります。


 最後に、『リベラ・メ』(我をゆるしたまえ)を措いているのが、特徴でもあります。


 余談にはなりますがブリテン先生の『レクイエム』といえば、日本政府が、皇紀2600年の事業として、各国あてに新作を依頼した中で、イギリスでは、若いブリテン先生が作曲、提出した『シンフォニア・ダ・レクイエム』がありましたそうな。


 まあ、日本政府内部で、具体的にどういうやりとりがあったのか、やましんは、当然知りませんが、お代は、予定の額より一桁多く払われたらしく、無視されたわけではないようですが、『レクイエム』ということばが、(ブリテン先生の周囲からも懸念されていたらしい。)日本政府内部で問題になり、演奏拒否されたとか。


 まあ、たしかに、『レクイエム』は、『死者の為のレクイエム』の、冒頭文が『レクイエム  エテルナ  ドナ  エイス  ドミネ』となってることから、全体をレクイエムと呼ぶようですが、ラテン語のいみは『安息を』というあたりらしいです。


 まあ、でも、たしかに、理屈をこねて、ほんとに、受け取り拒否したというよりは、いつか、また機会をみて、演奏しようね。と、なったらしい。


 で、やがて、機会は来ました。


 戦争が終わり、政府が代わり、1956年2月18日、ブリテン先生の指揮するNHK交響楽団が、日本初演を行いましたそうです。(世界初演は、1941年に、アメリカで行われたとか。その指揮は、バルビローリ先生だったとか。(日本には、バルビローリ先生のファン、多いはず。)


 この、『シンフォニア・ダ・レクイエム』は、管弦楽作品ですから、おうたは付きません。だから、題名を、変えておけば良かったんではないか、と、思ったりもしますが、そこんとこの、ブリテン先生の真意やいかに?(わかりません。)


 一方、『戦争レクイエム』は、内容が、内容で非常に重たいし、優れたオケも独唱者(ソプラノ、テナー、バリトン)も指揮者も、合唱団も、児童合唱も、と、たくさんの人が必要ですから、簡単には演奏できないし、なかなか、実演に接する機会は少なそうです。


 初演の録音もあるようですが、いま聴きましたのは、ブリテン先生が満を持して、自ら指揮して録音した、1963年の名高い録音であります。


 なぜ、ここで、登場したかは、言うまでもないでしょう。



・・・・・・・・・・  うつ  💐  うつ ・・・・・・・・・



 

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