第911話 『ハリー・ライム・テーマ』(映画〈第3の男〉テーマ) アントン・カラス

 わたくしが、新婚旅行というものにウイーンに行った際は、まだカラスさま(1906~1985)は、ご健在でした。


 すでに、公衆の前で演奏することはなかったようですが。


 最近は、『第3の男』がテレビ放送されるのは、見ないような気がしますが、一昔前は、わりあいによく、テレビに登場していた印象があります。


 もちろん、名作ですし、DVDは、常に販売されているのだろうとは、思います。


 でも、テーマ音楽自体は、うつうつではありません。


 生き生きとした作品です。


 もちろん、CDも、あります。


 映画全編が、チターの演奏で通されます。


 しかし、このテーマ音楽が出来るまでには、かなりの苦労話しがあったようです。


 戦後の混乱期で、ウイーンは連合国四国の占領下にあり、イギリスのリード監督によるこの映画で、カラス様は一躍、世界的な大スターとなりましたが、地元では、執拗な、いじめの対象にもなったようです。


 こうしたいきさつについては、軍司貞則さま著の『滅びのチター師』(1982年)に詳しく書かれています。


 また、かつて、NHK・FMで、ドラマ化されたことがありました。(1983年)


 確かに、暗い色調の白黒映画ですし、ウイーンの持つ、夢のような世界のイメージは、まったくありません。


 しかし、公開時、同じ敗戦国だった日本の人たちには、インテリ層を中心に、かなりの衝撃を与えたようであります。


 そのせいもあって、むかしは、良く放送されたのかもしれないです。


 この映画の主役は、まずは、ジョゼフ・コットンさま演ずる、うだつの上がらない正義感は強い、三流大衆作家さんですが、悪役でオーソン・ウエルズさまが登場しています。


 ヒロイン役は、アリダ・ヴァリさまで、いくらか、冷たいイメージがある役どころです。


 ラストシーンは、ものすごく有名です。


 実際に、現場にも行ったのですが、よく覚えていません。


 写真はあるのですが、奥様が、見せてくれません。(なくした、とか、言っております。)


 そうして、オーソン・ウエルズさまは、あまり出番は多くはないのですが、なんせものすごく印象的な個性ですから、ほっといても目立ちます。ただ、実際には、ウイーンの地下水路を逃げ回る場面は、ウエルズさまが嫌がって、撮影を拒否したので、代役らしいです。実際には走っていないようです。


 なんだか、永い間、見ても、聴いてもいません。


 これも、もう、歴史の中かもしれないです。


 そう、思うと、なんだか、『うつうつ』なのですね。


 1949年の映画。日本公開は、1952年。




  ********** うつ  🎡  うつ **********

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