第877話 『シェメッリによる宗教的歌曲集とアリア』 J.S.バッハ


 『うつうつ』におきましては、大バッハ先生(1685~1750)、残した作品の数に対して、それほどたくさん出てきてはおりません。


 それは、どうしても、じゅわじゅわ感を引き起こす音楽は、古典派からロマン派にかけてが主体になりやすいから、ということは、事実そうなんだろうと、思います。


 個人の感情を前面に押し出す音楽は、個人主義、資本主義、自由主義の発展と関係があるように思います。


 支配者さま、権力のある方(国王、領主、教会、大名・・・)の、お気にいるように作らなければならないという時代にあっては、なかなか個人的な感慨を述べることは、やりにくいでしょうし、社会批判や、さらに否定するような作品は作れない。(敵方は別かと。実は、そこが人類共通の問題のような気も。)


 大ハイドンさまは、宮仕えをしっかり全うしたのち、長生きしたこともあり、晩年には比較的自由な立場に立ったようです。 


 モーツアルトさまは、まだ若いうちに、ザルツブルグの大司教さまと大喧嘩してまで、結果、解雇され、側近の方に、けっとばされて叩き出され、やっと自由の身を得たけれど、お父様はそんなこと、考えにも及ばなかったようです。さらに、ウイーンで宮仕えの仕事も探したけれど、なぜか、出来なかったようです。(皮肉なことに、子供の頃の、お父様との演奏旅行に問題があったとも・・・つまり、目立とうとして、女帝さまの反感を買っていたらしい・・・)


 ベートーヴェンさまは、パトロンのお世話にはなったけれど、基本的に宮仕えはしていない。


 それよりも、ひと時代古い、大バッハ先生は、基本的に宮仕えが中心でしたような。


 もっっとも、近代から現代に掛けても、独裁国家における音楽家様は、なかなか苦労なさったみたいです。(シュスタコーヴィチさまなど代表・・・・。日本だって、例外ではないように。意味は違うけれど。)


 そこで、大バッハさまの多くのカンタータとか受難曲とかは、言い方良くないかもしれませんが、ある種、公的な作品です。


 大バッハさまは、声楽曲の作曲が主体でありますが、教会や領主さまに捧げる作品が、多くなっております関係上も、日本では一般的には、いささか親しみにくいのでありましょう。


 器楽曲も、多くは、大衆向けというわけでもないようです。


 まだ、ドイツ近辺は、まだ、そういう時代ではなかった。


 でも、同時代のヘンデルさまは(大バッハさまと同い年)、近代資本主義、民主主義の先進国、イギリスで活躍したので、商業的な、目立つ作品が多くなりましたような。


 ところが、こちらの、あまり日本ではなじみがないと思われる作品集は、『歌曲集』というよりは、雰囲気からして、ご家庭内などで歌われるような、賛美歌集という趣のようです。


 シエメッリさま(1680?78?~1762)は、CDの解説書をみると、Zeitz(ツアイト)のカントール、オルガニストだったかたで、ブライトコップ・ウント・ヘルテル社から、1736年あたりに、自ら収集した歌曲(賛美歌)集の出版をしたようです。そこには、954の歌詞があり、69曲には旋律が与えられていたとのこと。


 で、この作品集は、大バッハさまの協力により為されたものである。


 と・・・・・・・・


 で、このうちには、新しく作曲されたものもあるのだ。と。


 やましんが、今、聞いておりますのは、ドイツのクリストフォルス・レーベルから出ていたCDです。(CHE 0060-2)

 

 英語の対訳は付属していますが、どれが、バッハ様の真作なのかとか、細かいことは、なにしろ、調べがついておりませんが、第32、33,59は、真作らしい。


 日本語訳の付いたレコードも、かつてあったようですし、手元の輸入盤の『バッハ全集CD』にも、入ってますし、国内仕様のCDもあるようです。


 こまかい曲目などは、ネット上に情報が出ておりました。


 コアなバッハさまのファンの方には、既知の事項なんでありましょう。


 手元の『新装版対訳J.S.バッハ声楽全集(慧文社2015)』には、見当たらないようです。


 わたくしのさきのCDには、BWV番号(バッハ番号)が、書かれていませんが、BWV439~507とか。


 もっとも、このBWV番号は、シュミ―ダーさまにより、戦後になって完成したもので(やましんが生まれたよりも、あとです。)昔からあったものではないとのこと。 


 ご本人には、認識がないものでしょう。


 で、え、これが、とにかく『うつうつ』的には、なかなか、『じゅわじゅわ』なのです。


 言葉がドイツ語なので、わたくし、一応、合唱団にいたこともあり、読んで発音することは出来ますが、意味は分からない。(意味ない!)


 でも、じっつに、あったかくて、ほかほかなんです。


 面白い事に、たとえば、かのシベリスウス先生(1865~1957)が書いた、『フリーメイソンの儀式のための音楽』にあるお歌や、少数の宗教的なお歌、などとも、極めて近い位置にあります。


 つまり、しろとの言う事ですから、あまり信じないでください・・・ですが・・・一般的に、欧州で広く歌われてきた、共通する賛美歌の流れにあるのでありましょうか。


 という感じです。


 もっとも、『賛美歌』には、良い旋律だと、けっこう、何時の時代にも、取り入れられるもののようです。


 それだけ、一般に親しまれることが、前提なのでしょう。


 これまた、たとえば、みなさんご存知の『むすんでひらいて』に関しては、海老澤 敏さまの名高いご本がございますが、この旋律も、賛美歌に入っているようです。(書物をご参照ください。『むすんでひらいて考-ルソーの夢(岩波書店)』。CDもありますので、直に聞くことができます。『むすんでひらいての謎(キングレコード)』)


 ホルストさまの『組曲惑星』の中の有名な『木星』の中間主題も、賛美歌になっております。


 と、こういうような、お話しは、またいつか。

 




  ********** うつ 😢 うつ **********


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る