第867話 『ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品7』 アッテベリ

 スウェーデンの、アマチュアの星、アッテベリ先生(1887~1974)の26歳時期の作品。(1913~14年の作曲)


 アッテベリ先生に関しては、前に『ピアノ協奏曲 作品37』など、書かせていただいておりますが、そちらは、民族ロマン主義的だけど、個性あふれる傑作ですが、こちら、『ヴァイオリン協奏曲』は、むしろ作曲された時代に即したと言って良いんではないかしら、と思う、後期ロマン派風作品であります。


 あえて、民族色を強く打ち出すことはなく、とは言いながらも、そこはかとなく、ロマンティックな色彩があり、その、そこはかとないところが、じっつに良いのです。


 形式的には、オーソドックスな3楽章形式で、ハイドン、モーツアルト先生以降の協奏曲の伝統に沿って書かれています。


 ちょっと、やりすぎくらいに、赤裸々な音楽を謳歌するような『ピアノ協奏曲』は、実は、やましんは、大変好きなのですが、人に寄っては、耐えられなくなるかもしれないなあ、と思う反面で、こちらは、いかにも20世紀初頭の音楽を反映するものです。


 『ピアノ協奏曲』では、アマチュアの立場を巧みに逆利用して、プロには怖くて、ちょとやりにくいかもしれないような、大胆な表現をしていますが、その点、『ヴァイオリン協奏曲』のほうが、まったく、アマチュア味がしないです。


 そういう方が、お好みの方もいらっしゃると思います。


 とは言え、管弦楽の響かせ方には、アッテベリ先生ならではの爆発力もありまして、共通するものも、見出せそうです。


 ときに、やましんは、フルートを吹きますが、ヴァイオリンは、まったく技術的にはわからないのですね。


 これはギターもそうですが、あの、調弦という作業が、頭の非常に悪いやましんには、理解しがたいものなのです。


 それは、大変数学的な作業に思えます。苦手です。


 この作品、一番おもしろいのは、第3楽章でしょうか。


 ちょっと、シベリウス先生っぽいフレーズが出てきたり(『トゥオネラの白鳥』みたいな・・・)、薄暗い情念が渦巻いたり、爆発したり、目が離せない。にもかかわらず、終結部は大変オリジナルで、あららららら、という感じで、いつの間にか、いなくなってしまうのです!


 第1楽章は、良い意味で、もっと、まっとうな協奏曲です。(言い方良くないなあ。まあ、きっちり、終結するし。)


 でも、ソロが、頭からすぐに出てきたり、なかなか正体を掴ませないところは、巧妙に書かれています。


 全体的に、ソロの書き方が、とっても、興味深いです。


 しろとが、何と申しますか・・・、延々と、無限の空間を旅する未来の宇宙船といいますか、いったい、目的はどこで、どこに着地するのかあ?


 と、そういう『謎感』を抱かせる(意図的に)のですよ、これが。


 

 う~~~~~ん。これはあ!


 ヴァイオリニストさまには、もしかしたら、いくぶん、弾きにくいかもなあ、と、勝手に思ったりもしますが、そこは、よくはわからない。


 あんたが、分からないだけだろ。


 と、言われたら、そうなんだとも思います。


 もし、アッテベリ先生が、音楽一本で行っていたら(実際、才能的には可能だったと思うんですよね。)、もしかしたら、この曲の方向で行ったかもしれない、とか、妄想したり。でも、『ピアノ協奏曲』路線の方が、一般からは、やはり受けたかも。


 しかし、現実は、そうではなくて、公務員と両立させたところが、やはり、社会的にも、そうしたことがすでに可能だったということも含めて、思い切った作品が書けたということも含めて、そこは、さすがスウェーデン、というところなんでしょうか。


 ベルワルド先生(1796~1868)の時代は、音楽的には、全体保守的だったようで、当時は前衛的なベルワルドさまは、苦労したようです。晩年には、状況がいくらか変化したようですけれど。


 アッテベリさまの音楽は、まあ、そういう意味では、ロマン的、保守的ですが。


 やましんが聴いているのは、スウェーデン、スターリング・レーベルのCDです。(CDSー1034-2。『ピアノ協奏曲』とのカップリング。)



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