第343話 『セレナード変ロ長調K.361』 モーツアルト

 映画『アマデウス』のなかで、サリエリ先生が昔を回想しながら語る中で、まず出てきたのは、第3楽章の『アダージョ』でありました。


 ”ぽこぽこ、ぎしぎし鳴り始め、やがて一音高く~~~~~”


 いやあ、確かにここは素晴らしいです。


 よいところに目を付けて、映画にしています。


 そのあと、コンスタンツェさんといちゃついてるのを、サリエリ先生が隠れて見ている中で、聞こえてきたのも、同じ部分から。


 『ぼくの曲だ!』、と、突然、も~先生が言い、『勝手に始めやがった』。


 あぜんとするコンスタンツェさんとサリエリ先生を残して、大司教様の恐ろしい睨みのなかで、知らん顔で指揮しに登場する場面です。


 ただ、ここは、実際の曲をつなぎ合わせて使っておりまして、『アダージョ』の冒頭から、最後の第7楽章のフィナーレにワープいたします。


 なので、実際のところ、聴きどころを、たくさんぶっ飛ばしております。


 自筆譜には、”1780”の文字が書かれているそうですが、それは、他人様の筆跡なんだと。


 そこで、作曲時期には見解がいくつかあるんだそうですが、1781年から1784年の間にウイーンで書かれたものであろうと、されていますが、1783年から84年に書かれたのだろうと考える方が、強くなっているようです。


 ときに、大司教さまの側近、アルコ伯爵にけっとばされて、希望通りに、大司教さまから、めでたくも、解雇されたのは、1781年の6月8日なので、映画の中で、その演奏が行われた会場で、大司教様が『くびにする気はない。私に仕え身の程を知れ。』とおっしゃっているのは、なんとなく時期が合わないようです。


 まあ、そこのあたりは、専門書などにお任せとして、全部聴くと50分以上はかかる大曲なのですが、これを聞かずにお墓に行くのは、あまりに、もったいなさすぎです。


 BGMとしてCDをかけておくのも、けっこうかと思いますが、まだお聞きでない方は、その気になりましたら是非どうぞ。


 『グラン・パルティ-タ』とか、『13管楽器のためのセレナード』とかも呼ばれます。


 『パルティータ』は、『組曲』みたいな意味でしょうから、『大組曲』という感じでしょうか?


 ただし、これは、も~先生が名付けたのではなく、後世の方が言いだしたようです。


 なんとなく、びったしなので、現在も使われています。


 もっとも、この『セレナード』とか『ディベルティメント』とかという分野は、範囲があいまいで、はっきりした定義もないらしく、記録もしっかりしていないのだそうであります。


 もともとは、夜間、恋人の住む窓辺に近づき、『出てきておくれ!』と下から呼び掛けるのが、『セレナード』という訳ですが、(シューベルトさんの歌曲の有名な『セレナード』なんかそういう歌詞です。)そうした意味合いからは、すこし離れて使われているような感じですが、しかし、『立場の低いものから高いものに、夕方屋外で演奏され』たもので、転じて、偉い方の『お祝いの為などに』も、使われるというところは、本来の意味から発展しているようであります。


 そういう理屈な事は、ともかくとして、いやあ、良い音楽です。


 じゅわじゅわな部分が、たくさん。




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