【日誌】タリスマンオーダー社東京支部

一花カナウ・ただふみ

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 売上が低迷している。

 いや、正確に言えば半年連続の赤字だ。

 このまま累積赤字が増えた場合、東京支部を畳んで本部に戻らねばならない。

 決算は6月末。

 それまでにどうにか手を打たねば、いよいよアメリカに帰国することになる。



「どうすれば……」

 タリスマンオーダー社東京支部支部長である抜折羅バサラはパソコンの前で頭を抱えていた。

「やっぱりここは宣伝が必要じゃない? これまで口コミでやってきたけれど、さすがに限界なんだって」

「そうそう。事件が起きてから駆けつけるスタイルで行くのも、時代にそくしてないと思うよ。ネット……SNSをもっと活用したら?」

 タリスマンオーダー社のバイトであり恋人であるコウと、タリスマンオーダー社のパートナーである個人事業主であり高校時代の先輩でもあった遊輝ユウキが口々に言う。

「一応有名どころには手を出しているんだが」

「定期的に更新していないと意味ないよ?」

「むむ……」

 三日坊主というわけではないが、大きなイベントがなければ動かしていない。何を発信したらいいのかわからなくなって、いつも疎かになる。

 かろうじて続いているのは、個人所有の宝石や鉱物の写真であるが、一週間に二回アップされていればマシな方だ。

「そうだ! もうブログやったら? 毎日日誌を書くの。雑記でもなんでもいいから。長い文章は書くのも読むのも大変だし、一千文字くらいでどう?」

「英語でか?」

「日本国内向けのアピールするのにどうして英語なのよ……」

「日誌は本部に提出するために英文だからだ」

 紅に呆れられてしまったが、とても心外だ。遊輝も彼女の隣で哀れみの目を向けている。

 なぜそんな顔をされなければならないのだ……。

「とにかく。ブログはやってもいいと思う。使ってるSNSと連係させれば、多少は動きが出るから」

 パソコン貸してと言うので、抜折羅は遊輝と席を代わる。

 彼は手慣れた様子でキーボードを叩き、ろくに動かしていない各SNSの管理者ページを開いては何やら書き込んだり設定をしたりしていく。ものの数分で、遊輝は立ち上がった。

「これでよしっと。あとはこのブログの投稿ページで日記をつければおしまい。抜折羅くんが書けないときは僕や紅ちゃんが書き込むってことで」

「はーい!」

 やるとは言っていないのに準備が整ってしまったようだ。抜折羅はため息をつく。

「わかった。取り敢えずひと月やってみようか」

 こうして、ひと月日誌を公開することになったのだ。

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