#11 対決(09)

 「お遊びは終わりだっ!」

 ジーウィがいきなり殴りかかってきた。ブンブンと腕を振り回す。

 「そんな大振りのパンチが当たるかよ」

 新生コーディはスピードが上がっている。軽快なフットワークで全ての攻撃をかわすことができた。

 にゃーっ!

 突然のくろにゃあの声に思わず身体が反応し、しゃがみ込む。すると後ろから、ジーウィのパンチが上をかすめていく。

 「真後ろかよっ!」

 「いつの間にか分身したんだわ。正面にいたのは幻影。本体はいつの間にか後ろに回ってる」

 「水球レーダーは効かないのか?」

 「近すぎるのよ。これでは水を纏って動くことになるから、フットワークが重くなる」

 「力の差があるくせにセコい攻撃をする奴だな」

 次々と攻撃を繰り出すジーウィ。僕たちは躱し続け、反撃すると幻影に入れ替わっていて空振り。

 今までにない高速バトルが繰り広げられていた。不意を突くジーウィの攻撃はくろにゃあが察知してくれた。コーディと一体化している僕らと違い、自由に周りを見ることができる。くろにゃあの言葉は分からないけれど、僕の頭の上で発する声の位置は分かる。その声の方向から攻撃が来ると分かれば今の僕らなら避けることはできる。実は猫は視力はあまり良くない。しかし狩人でもある彼らは動く物を察する能力に長けている。人語を解するくろにゃあであれば、僕らに必要な情報を適切に提供するのは造作ないことだ。

 「しかし、このままじゃ……追い詰められるだけだ」

 「勇司くん、3秒時間を作って!」

 「わかった!」

 前後左右から繰り出される攻撃を避けつつ、コーディを滝が流れ落ちるエリアに移動させた。

 にゃー!

 「正面かよ!」

 突然正面に現れたジーウィを、横に飛んで避ける。

 「今だ!」

 夏美さんが水の魔法を使った! 水が盛り上がり、コーディの姿を象った。

 「うおおぉぉぉ!」

 夏美さんが雄叫びを上げる。水のコーディが拳を振り上げ、ジーウィの真横から殴りかかる。コーディのパワーが全く通じなかったジーウィが吹っ飛ばされた。

 「はぁ、はぁ、はぁ……」

 「すごい……ナツ」

 「やっぱり、魔法の方が強いわね。でも、水でコーディを作るのはあれが限界」

 夏美さんの考えが分かってきた。今の僕たちなら……できるかもしれない。

 「にーちゃん、やっぱ無理だ。パワーの差がありすぎる」

 「……コーディは操縦者の魔力を増幅することができるんだろ?」

 「うん。ナツの魔力もかなり増幅しているよ……あっ」

 「そうだ! 夏美さんは魔力によって自分のパワーを上げられる」

 「そんなっ! 聞いたことないよ」

 「そんな特殊な能力を持つのが夏美さん位だからな。それにコーディの身体を修復できたんだ。パワーを上げることくらい訳ないさ」

 沈黙するコーディに代わり夏美さんが発言する。

 「……勇司くん、簡単に言うけど結構大変だよ」

 「ああ、夏美さんのイメージするもう一人の夏美さんに僕らの動きをシンクロさせるんだろ? 正直、辛いだろうな。ついていける自信は正直ない。でも僕らには武器がないし、時間もない。あいつらが手を抜いてたのは、コーディと夏美さんが欲しかったからだ。ジーウィを手に入れた今、コーディを倒すことに支障はない。むしろジーウィの力を試したくてしかたないんだ。飽きたら大量のギガントを投入して圧倒するだけ。その後、夏美さんと世界を手に入れるだろう。夏美さんのイメージのレベルが高いのは理解できる。けど、やらなきゃ勝てない」

 「……わかった。じゃあ、行くよ!」

 夏美さんが集中を始めた。すると一体化した僕らの意識の中に、もうひとりの夏美さんが現れた。

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