#11 対決(01)
*
しっかり外は暮れていた。そこは魔法の光に照らされた空中庭園だった。広さはむしろ下の街よりも広い位で、宙に浮く岩から水が流れ、深い緑と幾本もの石の塔が並び立つその場は“楽園”という言葉が似合う場所だった。僕が歩き出すと夏美さんとくろにゃあが後に続く。
「ここは風がないのね」
夏美さんがふと漏らした感想に、僕もこの場所の異常さに気付いた。ここは非常に快適なのだ。おそらくは周りがバリアーのようなもので囲われているのだろう。ここが特別な空間であることがうかがえる。
「さてと、いらっしゃったぞ」
上空から青黒い翼をはためかせながら、天使が降りてきた。開いた胸からはガルフの姿が、その手の上にはギルトが乗っていた。
「夏美さん、どうやら向こうは一対一の対決をお望みのようだ。どうする?」
「あの子……ギルトが望むのなら受けて立つしかないでしょう」
「じゃあ僕とコーディは、ガルフとランペットと。夏美さんを乗っ取る隙を与えない
そして夏美さんに対し、僕は耳元でとあるアイディアをつぶやいた。夏美さんは黙って頷く。僕らは拳をぶつけると、二手に分かれた。
僕はコーディのペンダントと高々と掲げ上げる。
「ペナート・コーディオン!」
光に包まれ、白銀の巨人が実体化する。まだあちこちが傷ついていて痛々しい。僕とくろにゃあはコーディに搭乗した。
夏美さんは静かに移動し、ギルトと対峙。しばらく見つめ合った後、ニッコリと笑い、指をポキポキと鳴らす。
「いらっしゃい、ギルト! 妹が間違った行動をしたのなら叱ってあげるのがお姉ちゃんの役目だからね!」
僕らはランペットとの対戦に備える。
「コーディ、準備はいいか?」
「……にーちゃん、ひとつ聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「にーちゃん、さっき手の跡がくっきりと残るほど首を絞められてもナツを責めなかったじゃん。あれはどうしてなんだい? ナツに文句のひと言もないのが不思議なんだけど」
「え、手の跡が付いてる? 夏美さん、気にしてるかな?」
「にーちゃん、おいら真面目だぞ!」
「……んー。どうしてと言われてもなぁ。夏美さんが悪い訳ではないだろ? 彼女は明らかにガルフに操られていた。もし責めるなら彼女が乗っ取られたことだけど、それは仕方ない。相手が一枚上手だっただけのこと。それ言ったら僕なんか、魔法も使えないんだから責められまくりだし。それにコーディ、お前だって夏美さんの魔法でダメージ受けまくって、それでも責めないだろ。それと同じだよ」
「…………」
「良いんだよ。僕が問題にしてないんだから。それより聞いたか。『世界を統べるに相応しい王』だってさ。すごいな夏美さん」
「確かにそのくらいの能力はあるかもしれないね、彼女は。でも、それって似合わないと思うよ、おいらは」
「ははは、ああ。確かにそうだ。彼女がなりたいのは“世界の王”なんかじゃない。“優しいお姉ちゃんだ”!」
「でも普通はそれって比較にならないよね。ナツらしいけどさ」
「いや、なるさ。支配と協調だ。惚れたか? コーディ」
僕は眼を閉じ、コーディの主導権を握った。
「……にーちゃんの次にね」
「ぬかせ!」
僕は剣を抜き、走り出す。ランペットも胸の扉を閉じ、こちらを追う。ジャンプして空中に浮く岩を飛び移った。今は夏美さんとの距離を取るのだ。
ドーン!
ランペットから僕の行く先を塞ぐように雷撃が発せられた。
「! あいつは雷系の攻撃魔法を使うのか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます