プロローグ・合格
僕の生い立ちは、ある駅前の産婦人科で帝王切開での誕生らしい。そして、僕は紅葉台校下で4歳頃まで両親と姉と幸せに暮らしていたんだって。それが、両親の死によって、姉さんと2人きりになってしまった。それも東京でね。姉さんの大学が東京にあったからね。
幼い僕を姉さんが必死に、今まで育て上げてくれた。
そういえば、姉さんが大学生の頃は学食で姉の先輩からご飯を食べさせてくれたことが多かったような気がする。
~回想~
『あら、坊や。食べないのか?』
『だって……ママが……』
『ああ、お姉さんね。大丈夫よ。あの子なら、バイト先で食べているわよ』
『じゃあ……』
『食べても問題ないわよ。子供はそんなこと気にしなくていいのよ』
~回想終わり~
僕は志望校(高校)の掲示板で自分の合格を確認して、姉さんの車に乗った。姉さんは衆議院選挙の候補者なので、その応援をしなくてはいけない。自由生命党公認をもらっている。僕の名前は虹一丸(かずまる)、高校受験を終えたばっかりなんだ。姉さんは純美子っていう28歳。国民と社会の推薦を受けている。
相手候補は自由資本党公認の公暗党推薦の現職39歳。3選を目指している。因みに、衆参同日選挙なんだ。
志望校より、選挙区内に移動後
姉さんの演説
『私は衆議院議員になりました暁には動植物共同参画社会の実現に取り組み、高校授業料無料化、郵政民営化見直しを行います……」
動植物共同参画社会というのは参政、経済活動の自由以外の権利を人間以外の種にももってもらう社会のことだよ。郵政民営化見直し(国民党)は国民の利便性を取り戻して、高校無償化(社会自由党)は民主党マニフェストにオリジナル盛りした内容だよ。連立を組む予定の政策まで入れているのは当たり前だったりするんだ。
あれ、演説がいつの間にか終わっていた。演説を終えると、姉さんは車の中に戻って来て、僕に高い高いをしてきた。
「姉さん、僕子供じゃないんだけど」
「何言っているの?私が育てたでしょ」
「それはそうだけど」
と、姉さんのペースに振り回されるんだよ、いつも。
突然、僕の携帯が鳴った。
『一丸君だね!私共の政党への投票をお願いいたします。』
そのような電話が何度もある。仮入学の日に生徒会選挙があるとは聞いてたけど。
僕の入る高校は永田高校。特徴として、生徒会選挙は政党の比例代表制度で行われる。しかも、票数は1人1票ではなく、点数=票数(1科目最大100点)となっていて、生徒は全員政党に所属するって決まりがあるんだ……。
そして、仮入学の日に、僕は校内政党゛緑"に投票し、校内では、この政党に所属することに決めた。
生徒会選挙は、政党間で競い合い、政党内での教え合うことを通じて、やる気を引き出す仕組みで、当選の議席はその政党の頑張りの評価だよ。
外では、衆議院選挙と参議院選挙の投票が行われていた。結果は、自由生命・社会自由・国民の3党で衆議院は300(自由生命240)、参議院で140(自由生命120)の議席を得ることができた。姉さんは、一番で当選したんだ。相手は比例代表にも立候補してたけど、それも復活当選をしなかった。投票率は78%を記録した。近頃にしては、高かった。
その結果を速報する番組がテレビで流れていた。中継が自由生命党本部からされていて、党代表の会見が始まった。
『今日の選挙は国民の皆様のお陰で勝つことができました。ありがとうございました。早速、党人事を発表させていただきます。幹事長には4月1日に永田高校に入学する者を充てる。その者の名前は今は明かせない(就任は4月1日かつ今は中学生)。しかし、私の生態学の師匠のお孫さんであり、我が党の期待の星である。政調会長には4月1日に桜丘大学に入学する足利久子、国対委員長には虹純美子を充てる。(虹純美子は3月一杯)
以上』
「ふ~ん、姉さんすごいね。でも誰なんだろう?幹事長」
「ありがとう、一丸ちゃん。本当に誰かしらね」
そういうと、姉さんは目をそらした。何か隠してるんだろうか……
今、テレビに出てた代表の名前は豊臣綱吉っていって、姉さんを選挙に出した張本人なんだ……何か約束してたらしいけど、まさか、身近な人間なのかな?
次の日の朝、僕の携帯が鳴った。
『もしもし』
「はい、虹一丸です」
『わしだ、豊臣だ』
「なんでしょうか?」
『ちょっと、党本部まで来てくれ』
何だろうかと思って行ってみると、幹事長に任命された。姉さんの国対委員長解任も伝えられた。姉さんはその時、当選証書を貰いに行ってた。
その日の夜……
「姉さん、この話知ってたね」
僕は頭に血がのぼっている。姉さんはあせっているみたい。
「確かに頼んではみたけど簡単に通るとは思わなかったのよ」
「やっぱり……」
突然、玄関が開いたかと思うと、女の子が怒鳴りながら入ってきた。
「一丸君、難関校に行くのはいいけど、政治家になるのは聞いてないわよ」
僕は突然のことに驚き、冷静になると体中から汗が噴出してきてる。
「ちょっと待ってよ、石部さん。僕も今日知ったんだよ」
そう、声の主は幼馴染の石部ヒロ子さんだった。僕の天敵でもある。
「だったら、直ぐに報告しなさいよ。それにヒロって呼んでっていつも言ってるでしょう。」
「そんな呼び方出来ないよ女の子に……それに、今日聞いたんです」
「二人ともそこまでにしなさい。私は明日から国会よ。一丸ちゃん早く寝なさい。石部さんもかえってちょうだい。」
次の日、僕は姉さんに党本部に連れられてきた。
「さあ、一丸ちゃん。今日から新人としての研修があるわよ。頑張りなさい」
「姉さんは?」
「私は国会があるから、この足で向かうわよ」
あっ、そうだよね。総理の指名選挙あるんだよね……確か。
「総理指名は豊臣さんに入れるわ、当然。さあ、麻○家綱の辞任が最初に見れるわ。楽しみね。」
姉さんはそういうと僕を残して行っちゃった。
僕も今日の研修頑張らなきゃと、気を引き締めて中へと入った。
まず、幹事長としての心構えから、研修は始まった。その前に自己紹介があった。
「僕は、虹 一丸と言います。まだまだ未熟なんだけど、精一杯頑張って行きます。」
「うむ、頑張れ」
「ところで、おじさんは誰?」
素朴な疑問だったんですけど。
「わしか?わしは、新しく国対委員長に就くことになった錦だ」
「へぇ~」
なるほど、年に見えるけど、30前なんだね。
〔ちょうど同時刻〕
国民党本部では、前田利之の研修をしており、社会自由党でも、夜叉節秀子の研修をしていた。
国会では姉さんも参加しての研修が終わり、総辞職(麻○家綱内閣)がなされ、首班指名選挙が行われていた。
衆議院 参議院
豊臣綱吉303 140
浅野太郎156 90
(自由資本党新総裁)
浅井長吉 21 12
(共産党委員長)
この結果、わが党代表豊臣綱吉が総理に指名された。
今日の衆議院は姉さんの「ぎーちょー、これにてきょうはー散会することをーのぞみまーす」動議の声にてお開きになった。(議長・副議長選挙割愛)
衆議院議長:村井とみ(自生)
参議院議長:横山佳菜子(自生)
その後、姉さんが迎えに来てくれて、一緒に帰宅した。
「姉さん、動議が上手いね」
「おだてても何もでないわよ」
「ジュースも?」
「まあ、そのくらいなら仕方ないわね」
この日は、久々に甘えられた。
その頃、代表は皇居で総理大臣に任命され、組閣本部を立ち上げ、方々へ電話をかけていたらしい。因みに、姉さんの携帯電話にもかかってきた。
『もしもし、わしだ』
「どうなさったのですか。」
『誰を大臣にするべきかのう』
「それは自分で考えて下さい、代表」
『君を総理大臣補佐官にしようと思ったんだけどな』
「お断りします。この子の世話があります。」
『うむ、わかった。』
姉さんは電話を切って僕に顔を向けた。
「でも、組閣に随分時間掛かるんだね、姉さん」
「そりゃそうよ!身体検査もやらないといけないんだから」
「えっ、身長や体重なんかで決めるの?」
「違うわよ。いい一丸ちゃん、身体検査っていうのは、賄賂と間違われる金銭・情交等の見返りを仲介に便宜を図ったりしたことの有無や反社会勢力との繋がりの有無を調べることよ。私の様な事情が有るか無いかも調べることも必要だし」
姉さんの様な事情!?なんだろう?
「子育て中とかね」
「僕、姉さんの子供じゃないよね?」
「私がいなかったら、どうなっていたのか考えてみて?」
う~ん、身内の人間を知らないで育ったかな?
「そうよ、児童養護施設で育って、親のことを知らない子になっていたかもね」
え~、それは嫌だな!?
「たから、私には感謝しなさい」
「うん、今までありがとう。これからもよろしくね、姉さん」
僕は姉さんに無言で抱き締められ、少し安心した。
[一方、官邸〕
「吉保、国民党代表の松平どのには約束通り、郵政改革担当大臣をして頂こうと思うが、他に任せる担当はあるか?」
「では、動植物共同参画担当大臣を兼務して頂いては?我が党の政策を理解して頂くためにも」
「よい考えである。その方は官房長官に致そう、吉保」
閣僚名簿
内閣総理大臣 豊臣綱吉・播・35
内閣官房長官 徳川吉保・播・33
総務大臣 堀田秋良 ・播・34
国土交通大臣 郡山清子 (社会・党首)25交通工学相
厚生労働大臣 吉良秀樹(国民) 27保健体育相
経済産業大臣 柳沢秀男 (社会) 37金融担当相
外務大臣 前田利一(参)植 34外国語担当相
財務大臣 荻原利光(参)播 31数学担当相
農林水産大臣 切川直人(民間) 20自給率向上担当相
環境大臣 天松秀子・播 32分類学・生態学担当相
法務大臣 菅原道長・植 37拉致問題担当相
防衛大臣 長馬義則(民間) 16
文部科学大臣 朝倉道長・植 27国語担当相
国家公安委員長 今川光明・播 31
郵政改革・動植物共同参画担当大臣 松平静夫(国民・代表) 50
理科担当大臣 浅間 慎二(しんじ)植・25
社会(地歴・公民)担当大臣 浮間 留美・植 50 副総理
播は播種
植は植栽
(参)は参議院議員
組閣が終わったらしい……
僕は
「あら、明日、所信表明だわ」
「僕は、また研修だけどね」
「一丸ちゃん、新人なんだから当然よ」
「あれ、姉さん初当選じゃなかった?」
「確かに、初当選よ。でもね、政治には、携わる仕事をしてたじゃない」
翌日、僕の研修を受けている時間帯に、国会では所信表明演説が行われていた。
「私の内閣では、まず高校無償化と郵政改革を今国会で成立させて、7・8月中に臨時国会を開き動植物共同参画社会実現の為の法律改正を行いたい」(総理)
と、いう内容だったらしい。研修の内容は少しずつ難しくなっている。無事に終わりたいな……
それから、2日後離任式に出て、中学校に別れをつげたんだ。
明日から高校生だ。それと共に政治家デビューだ。
おまけ
生徒会選挙のルールの説明
1、完全比例代表制度で行う。
2、比例名簿は点数拘束制度を適用。点数が同点の時は学年の先輩が上位。同学年の場合には勝っている科目の多い方が上位。
3、公職との兼職禁止(政党の幹部は公職と見なす)
科目・教科担当大臣の仕事についての説明するね。
保健体育大臣は少子化対策等をやっているんだ。
国語等の一般教科の大臣は名誉職なんだ。
その他の科目の大臣は学会出席と国民に発表内容の広報です。
因みに衆議院は小選挙区比例代表並立制、参議院は中選挙区と比例代表(並立じゃないよ)で行われました。
議員数(選挙前)
衆議院
自由資本 300
公暗 30
自由生命 90
社会自由 10
国民 20
共産 10
無所属 20
参議院
自由資本 140
自由生命 80
社会自由 5
国民 10
共産 7
議席数(選挙後)
衆議院
自由生命 240
社会自由 20
国民 40
自由資本 140
公暗 15
共産 20
無所属 5
参議院
自由生命 120
社会自由 9
国民 11
自由資本 89
共産 12
無所属 1
これは小説内の議席数です
永田高校生徒会
緑 4
自資 3
共産 2
無所属 1
初期キャラ設定
虹 一丸(かずまる)15 主人公11/30生まれ
虹 純美子28 主人公の姉(親代わり)3/31生まれ
豊臣 綱吉35 自由生命党代表 総理の座に就く
石部 ヒロ子15 幼馴染だが、新党で主人公に対抗
麻○ 家綱60 自由資本党総裁 選挙前総理
足利 久子18 自由生命党新政調会長で、桜丘大学地域環境科学部総合森林科学科新入生
錦 一郎29 自由生命党新国対委員長(4/1付)
夜叉節秀子 15永田高新入生 社会自由党幹事長
前田利之 15 永田高校新入生 国民党幹事長
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