090:蠢くもやし
本日の依頼者ご一行様と俺は、西の森に入り込み北へ向けて進む。
のしのしと前を歩くまとめ役は、炎天族の上に横幅もあるせいで周囲は見渡せない。
それでも木々の狭間から左右を必死に見たところでは、心なしか以前に来たときよりも小ざっぱりしているようだった。
頑固な団扇草も邪魔になる場所には見当たらないから、あれからは真面目に片づけてるんだろう。
久しぶりに来た気がするけど、考えればそう経ってないんだよな。
ここ最近で急にあちこちに連れていかれるようになったから、それまでの俺の行動範囲を考えると感覚がおかしくなったように感じる。
筋肉森葉族が前の作業とは違うと言ったからには、川沿いの道なりではなく、森の中方面なのかなと思っていた。
なのに前と同じように川沿いを歩いているし、道を逸れる気配がない。
「あのーまとめ役? 連絡路周辺の依頼としか聞いてないんだけど、この辺じゃないのか」
そういえば前に名前を聞いた気がするが、筋肉まとめ役としか覚えていない。
いや、あれはギルド長から聞いたんだっけか。
「べぶっ」
思い出そうとして首をひねり一瞬でまあいいかと諦めたとき、いきなり立ち止まった背中にぶつかってしまった。
魔物が現れたかと思って見上げると、まとめ役が鋭く睨んでいる。
「あ、ぶつけて、すんません……」
俺、弱っ。心根が弱すぎ!
しかし怒らせたかといった心配は杞憂だった。
「タロウ君。まとめ役だのと水臭いじゃないか。そういえば名乗ってなかっただろうか? これは失礼しちゃったな。ゴスト・ヘッドだ。気軽にゴスちゃんと呼んでくれてもいいぞ」
「いやです」
「なっ、なにぃ?」
狼狽するまとめ役を笑いながら、俺の背後を歩く二人から声が上がった。
「俺はセプテな!」
「イレントだ」
「あ、どうも」
筋肉首羽野郎が冷やかすように名乗り、筋肉森葉は流れで気のない返事をした。
そういや、こいつらが互いを名前で呼んでるのを聞いた覚えがない。恐らく脳筋波長で交信しているのだろう。
「お前ら、ずるいじゃないかっ」
「ハハハ、まとめ役様々なんだししょうがないじゃん?」
「そっか……責任ある立場とは孤独なものだな」
筋肉仲間がいるだろうが。
背を丸めて項垂れながら歩き始めたが、背筋を盛り上がり震わせる様は、やはり威嚇されているとしか思えない。鬱陶しい!
「えー、ゴスト、ですか。俺も、君なんか付けないでくれたらいいですよ」
そもそも、前は呼び捨てじゃなかったか。なんで突然そんな対応に変わったんだよ。
がばっと振り向いた筋肉まとめ役は、満面の笑みを浮かべていた。
「いやそうだったなタロウよ。今回は、少しばかり無茶な依頼をしてしまったからな。気を遣って呼んでみたのだ」
「はぁ」
それおかしくないか。
俺が依頼を受けた側なのに、なんで金出す方が畏まってんだよ。大体、無理といえば前回の方がそうだ。
よく分からないがウキウキと歩き出したので、もう下手につつくまいと急いで後を追った。
「がはははは!」
時に敵を殴りながら笑う、うるさいまとめ役の声を聞いたりしつつ、背後の木陰に縮こまって様子を伺う。
あれは魔物を殴って嬉しい変態なんではなく、気合いの表れなんだろう。そう思いたい。
今回は、道々の草を刈る依頼ではないらしいが、足止めを喰らってる間は暇だ。
雑草にまみれた湿った土の細い道だから、魔物を避けつつ移動するのは難しいからな。
それも、俺の鈍足のせいだろうけど。
仕方なく、移動するぞと声を掛けられるまで、なんとなく目に付いた枝葉を払いながら待った。
とはいっても、さすがはまとめ役に抜擢されることはあるんだろう。
さっさと片づけてしまうから、そう長い時間ではない。
やはり抜群の安心感だと感じたのは間違いじゃないようだ。
比べるのは悪いが、強いなと素直に思ったベテラン中ランク冒険者らしいヤミドゥリとトワィラ兄弟たちを思い出しても、やはり安定感を感じる。
まあ比べるのが失礼だといった価値観も、ここでは薄そうなんだけど。
力量を明確にしないと、自他共に身の危険があるからだろう。謙遜する奴はいないが、見栄を張る奴もいない。
それはともかく、その安心感も個々の力量によるだけではないよなと、びくびくしながら眺めつつ思った。
どこが違うのかと思ったが、思うに連携がスムーズなんだ。
セプテとイレントの方も見る。
「ぎゃははは!」
「うはははは!」
うん。よく息が合っている。
こいつらだからこそという気がするよ。
どこか突出しているから人より秀でるのかなとすると、こいつらの場合は無駄に鍛えた筋肉と、それに侵された脳だろうか。
役に立ってるんだから見せ筋ではないか。
ともかく、これを一つの基準として参考にするのはまずいかもしれない。
どのみち、俺が目指すには高すぎる身体能力だった。
せめて同じ低ランク冒険者から参考にといっても、クロッタらしかまともには知らないが、あいつらにだって追いつける日は来るといいなーと溜息交じりに呟く程度だからな、はぁ……。
空しさを手近な枝を叩き折って晴らす。
どうやら午前中にしっかり討伐を済ませていたようで、前ほどは魔物に遭わないし、数も少ない。
上り坂に差し掛かる場所まで、すんなりと来たが、ここでまたミズスマッシュが現れた。
俺を庇うように背を向けて側に立ち矢を放っている首羽族の男、セプテを見た。
正確にはその首から生える一対の翼だ。
普通は正面から話すし、フラフィエ以外の羽をまじまじと見たことはなかった。
セプテの羽は、濃い茶色と黒っぽい斑点の模様が、ベースの白い羽毛を覆っているようで、イメージ的には梟などを思い出す。いや鷲とか鷹でもいいんだけど、顔が前面にあるからそんな気がするんだろうか。
そんなことはいい。
恐る恐るじっと睨んでみるのだが、おかしいな。あんまり気色悪くない。
人間っぽくない部分に俺もようやく慣れてきたのかと思ったが、考えたら岩腕族の岩のような肌もよく見れば不気味だが、特に気にはならなかった。
セプテの羽はきびきびと動き、フラフィエのように無駄にパタパタふわふわと、はためかせることはない。
骨がある辺りが太くしっかりしているし、ちょっとくらい引っ掛けても問題なさそうだ。
思い出してみるとフラフィエの方は、あの華奢さが駄目なんだろうな。
簡単にもげそうで。
「どうしたタロウ、こいつの羽になんか付いてたか?」
「ぅわっ、いやなんでもない!」
静かに隣に立っていたのはイレントだ。気が付けば警戒していた森の奥から戻ってきていたようだ。
森葉族め。隠密スキル高すぎんだよ。
「ん、俺の羽を睨め回してたって? 喧嘩売ろうってのか。やだよ面倒くさい」
「嫌な言い方すんな! そんなつもりはない」
「魔物は片付いたぞう。どうした争いか、やんのか?」
「誤解だ」
「チッ、違うのかよ。期待させんな」
「なんでお前らは一々物騒なんだよ!」
じゃあ、なんだよと不思議に見られた。
前に、シャリテイルと話したことを思い出して胃が痛む。
他種族の特徴にも慣れないと、いつもじろじろと見るのは失礼だよなと思ったことだ。
気を悪くされませんようにと祈りつつ、渋々と白状する。
「そのぅ、ちょっと、どういう機能があるのか気になって」
あっ、機能とか言い方も、もちっとなんかあんだろ!
「ああ、これね。やっぱ人族も気になるもんなんだな」
何気なく答えられた。
「首羽族は多くないからな」
ゴストもイレントも、初めて見ると気になって聞いちゃうんだよなあと頷いている。
ほっ、俺だけじゃなかったのか。
いやそれはそれで、いつも聞かれるとうざいんじゃないかと思うが。
県民性の話みたいに、食事はやっぱりウドンが多いのとか、お茶が安くて美味しそうとか、ラーメンは豚骨しか認めないのかとか、タコヤキとゴハンを一緒に食べるのは本当かなどなど、各地のイメージによる定番のネタ。他愛もない会話の一つでしかないが、それを繰り返されすぎてうんざりし、ある日そんな話をふった罪のない誰かに対して半ギレしてしまうようなことが、俺の回で起こってしまったらどうしよう……。
ついぐるぐると悪い思考にはまりかけてしまったが、バサッと大きな音がして意識を戻す。
羽を広げたセプテは、風切り羽を器用に動かして見せた。
しかめっ面になるのを堪える。堪えきれてますように。
「これな、風を読むんだよ。矢で獲物狙うとき、すげー便利」
「そう、なんだ」
なるほど納得と何度も頷いてみせると、セプテはゲラゲラ笑い出した。
え、俺からかわれたのか?
隣のイレントも噴き出した。
「いやぁ昔さ、俺が聞いたときと反応そっくり。つうか同じで笑える」
ああなんだ。そういうことですか。
信じていいのか迷ったじゃねえか。
「うむ、問題はすべて解決したようだな。それでは先を急ぐぞお!」
解決するような問題だったのか。
とりあえず、嫌な気分にさせずに済んで命拾いしたのは確かなようだ。
川沿いの連絡路を急ぎ足で進む。
たまに魔物に遭遇したものの、午前中の討伐は済んでるだろうし、気が付けば登り斜面まで来ていた。
「よし、ここまで来たら魔物の取りこぼしも減る。一気に登るぞ」
ゴストの掛け声に頷いて後に続きながら、周囲へも目を向けた。
前回は余裕がなく、周囲をよく見ることもできなかったからな。
登りながら崖下になった川沿いに目を向けると、巨大な緑の塊が見えた。
「うわっ、なんだあれ」
超巨大ヤブリンみたいなのが生えてる。
背高草が柔らかければ、垂れ下がってこんな風になるんじゃないかっていう丸い葉の塊だ。マリモが半分埋まってるような感じというか。
「おっとタロウ、本日の任務はそっちじゃあないぞ」
つい身を乗り出そうとした肩をがしっと掴まれた。
あ、危ない。もう一歩で転落していたかも。
こんなところで、ただの転落死なんて、ケダマに殺されるより情けないな。
いや、たまにニュースでも見たし、意外とそういった何気ないことで死んじゃう方がリアリティある気はする。
足元には気を付けよう。
だけどあれ、川の半分くらい、はみ出てるんだけどな。
「いいのか? すごく邪魔そうに見えるけど」
「いいのいいの」
あのもさっとしたのを放置して、他になにがあるってんだ。
考えたら、あれを毟るには川の足場が問題だよな。
それからはあっさりと森を抜け、山側に出ていた。
おい、連絡路周辺の依頼じゃなかったのかよ。
だったら遠回りでも街の北側出口から回った方が、敵に時間を取られずに済んだじゃないか。
「森ん中を通る必要はあったのかよ」
思わず呟いてしまった言葉に、ゴストは真面目な顔で右腕を掲げると力こぶを作る。
「少しの時間も無駄にせず、討伐したいではないか」
もっともらしいことを言っているが、時間に余裕があったのだろう。
俺の依頼は本当に短時間で済みそうな感じだな。
「やっぱり俺はついでだろ」
「おっ、タロウ鋭いじゃん」
「誤魔化しても無駄みたいだぜ」
「さすがだタロウ。草なぶりに特化した、慎重派と名高い冒険者だけのことはあるなハハハ」
うるせえよ!
特化したんじゃなくて、せざるを得なかったんだ。そんなポジティブな見方はやめろ!
たまに思う。
こいつら心底そう思ってて、嫌味じゃなさそうなのが性質が悪いって。くそっ。
いっそ茶化してくれよ!
「では、拠点に移動だ」
さらっと今さら告げられた目的地に、冷や汗をかいた。
「どうだね。大変な光景だろう」
枝葉で偽装した拠点――と呼ばれている小さな掘っ立て小屋。
その板屋根の一部が、ぱかっと開くようになっており、俺とゴストは頭を出している。
中途半端に覆った邪魔臭い枝葉が、ちくちくと顔を刺して地味にいらつく。
くっ……静まれ俺の右腕よ。
お前のスキルが目覚めるのは、もうちっと後なんじゃ。
刈ってやりたい衝動を抑えつつ、周囲の状況を改めて確認する。
高原を吹き抜ける爽やかな風を顔に受け、俺は広々とした淡く青い空を呆然と眺めた。
土色の荒野には、黒々とした大岩がぽつぽつと転がっているが、もしかしたら昔に邪竜が現れた時の名残だったりするんだろうか。
今は、中ほどの巨大な岩には櫓が組まれている。
辛うじて誰かが手を振っているのが見え、ゴストも振り返した。
「なんで、俺は岩場を見ているんだ……」
確か以前、岩場にも来てほしいなんてふざけた依頼のフラグは全力で叩き折ったはずだ。
うやむやになっただけの気もするが、それはいいとして。
「俺って、山道の整備に来たんだよな」
現状を把握した俺は、思わずぞんざいな態度で訊ねていた。
「無論だ。タロウ、見ろ。あいつが標的だ」
言われた先へと、雑に目をやる。
「確かに緑色の塊はあるけど……」
普通の雑草が、地面にへばりつくようにして生えているようにしか見えない。
背高草のように視界を防ぐでも、細い枝葉が広がって邪魔な感じでもない。
どこの山でも見られそうな光景にしか思えないが。
「まあ、しばらく見ていてくれ」
何か毒液でも吐き出すとかあるんだろうか。
言われたとおりに、じっと目を凝らす。
濃い緑と枯れた茶色い部分が、まだらな雑草の密集地。
それが、地表をぬるっと滑った。
「ぬ、見たか」
「か、風が強いし、そのせいだよな」
「見間違いじゃないぞ。ああいうものだ」
え、ええぇ……あんなん触るの嫌なんですけど。
ここには気持ち悪い草しかないのかよ!
「あれ動くんだよ」
「突然だから戦闘中なんか邪魔でさー」
パニックに陥りかけていると、すぐ下からセプテとイレントの声が届いた。
二人は外に立っていたが、大して高さのない小屋だし背のある二人だから、屋根の上からでも近い。
この覗き窓の位置に意味はあるんだろうか。
「対象物と位置は把握できたな。さあ、向かうぞ」
渋々梯子を降りて、外への扉を開ける。
「ケゥ……ぴョッ!」
「ふおっ!」
途端にハリスンが飛び出したが、イレントが長剣を片手でくるっと回しただけで、なんなく切り落とした。
西の森の側だし、中ランク中難度の位置か。
この小屋、拠点だとか言っていたが、機能を果たしてんだろうか。
人が集まるのに、こんな場所でいいのかよ。
がさがさと木を揺らす音を聞く度に、びくついてしまう。
ちょくちょく魔物が飛び出すたびに、近ければイレントが剣で、遠目ならセプテの矢が撃ち落とす。
なんの心配もないように思えるものの、こいつらの体力はどうなってるんだ。
見ていると無駄な動きはないし、これで休みつつなんだろうというのは見てとれた。さらには、魔物が少ない間は交代で戦闘したりと、やりくりしているようではある。
それにしても、他の種族ズルすぎない。
「もしかして、遠征とかにも行ったりする?」
「ああ、たまにな。こちらの仕事が優先だから、よっぽど人が足りないのでなければ、参加は見合わせるが」
もしかして、中ランクといえど上位者なんじゃないかと思い始めていたが、やっぱりそうだったのか。
俺も、どうにか見る目くらいは肥えてたようだ。
このまま冒険者専門の解説者として鍛えよう。
ちょっとした岩の破片以外は、なんの障害物もない高原を横切り、目的の緑の悪魔へと近付いていく。逃げたい。
間もなくゴストは草の手前で立ち止まり腕組みした。
間近で見れば、膝ほどの高さもない。クローバーのような平べったい葉っぱが連なり、絡まった細い茎の先端はぜんまいのように巻いている。
今は風にあおられ、そよいでいるだけだ。
「これが忌々しき、
「またそんな人を馬鹿にしたような名前」
どこの植物学者か駄洒落研究家かは知らないが、名付けた奴、いっぺんしばいてやりたい。
深呼吸して頭を冷やして、集中だ集中。
「少し調べる」
こいつ、引っこ抜くだけで済むのか?
移動するくらいだから根を張れないと思ったが、ものすごく伸び縮みするとかの可能性もある。
得体の知れない草の塊の側で片膝をつき、気分的に息を止める。
そっと剣で茂みを掻き分けると、葉っぱがぶわっと蠢いた。
「うおぉ気持ち悪ぃ!」
鳥肌立った!
また仰け反りすぎて尻餅つくところだったろうが!
どんな生態してんだよ。ハエトリグサみたいなもんだと思うが、動きすぎだろ。
我慢して根っこ辺りを覗いてみるが、どうなってんのか分からん。
さらによく確かめると、根っこが地表を覆うように広がっているようだ。
接地面は細かいもやしのような層があり、葉や茎はそこから生えているらしい。
さらにそのもやし層と地面の隙間辺りに、剣の刃を水平にして挿し込んで、持ち上げてみ……ぎゃああ動いた! こいつ、目の前でっ!
「な、面倒だろ?」
「特に、夜は困りもんでな」
暢気にぬかしやがって、依頼したくなる気持ちはよく分かったよ!
俺だって頼みたいわ!
移動距離は、ほんの数十センチといったところだろう。
ただし目の前で、ずずっと動かれると、かなり動いたように見える。
毟りながら移動されるなら追いつつだから面倒だろう。
しかも、そこそこ面積もある。
どうにか切り分けながら殺るしかない……。
「こいつに毒は」
「それは大丈夫」
ならば、ひとまず剣はしまって、素手だ。
ちょくで根に触るとすぐに動きそうだから、まずは葉の下の方を掴み、思い切り引っ張った。
途端に、手に絡まるように茎が動く。
ぞわぞわ動くな。
引っ張ると、もやし層が逃げるように滑る。
幅があるためか、それなりに力までありやがる。
大人しくっ、毟られろよ!
試しに綱引きをしてみたが、千切れるのは葉っぱばかりだ。
もやし層を断たなければ、除去は難しそうだ。
もう少し力があれば、力持ちいるやん。
振り返って目が合うとゴストは首をすくめた。
「そんな草っぱに、この腕が負けるはずはない。だが、そいつもしぶとくてな。茎は千切れるが、肝心の根が残ってしまってね。それにええと、持久戦になれば足腰にくるのだよ!」
ついでに二人を見る。
「あぁ俺、刃物の扱い得意じゃないからさー」
「柔らかいから、農具でも用意しないと難しいんじゃないか。それに剣で地面を叩っ切るのはちょっとなぁ」
セプテは空々しく、イレントはやる気なく言い訳した。
お前らが生き生きとしているのは魔物の前にいるときだけだろう。
分かりましたよもう。
「解体してやる」
こういう時はナイフだな。
茎の束を掴みなおして持ち上げつつ引っ張りながら、すかさず縦に割くようにナイフを突き刺した。
うまく切り分けられたのは良かったが、細切れにしたことで追うのが大変になるとは誤算だった。
逃げまどう敗残兵を刈り尽くすと、動かなくなった骸を集めて汗を拭う。
動かな……動いてるじゃねえか!
葉の方と絡めてしまうと移動はできないようだが、反応はしている。
そりゃそうか、草だもんな一応。枯れるまでこのままなのか……。
どうやって動いてるのかと思ったが、繊毛運動?
大量のもやしが面での移動を可能にしたのだ。どうでもいい。
どうやら転草は、根を地中に下ろしていないらしい。
根は地表に貼りついているだけなのは、ありがたかった。
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