第74話 リル、ナナシに想いを告白する!
「美味しいねミスリル」
「・・・」
宿の食事を4人で食べているナナシ一行。
カーズの待つ死神城の麓にある十二指町までやって来ていよいよ最終決戦か!
と思った直後に踵を返して宿に泊まる事になったのはまだ分かる・・・
だが法外な料金を提示されたのにも関わらずナナシは1週間分の宿代を前払いしたのだ。
宿側は勿論代金さえ支払ってもらえるのであれば問題なく快く承諾してくれたのはまだ良い・・・
泊まる人間なんて殆ど居ないのだから当たり前である。
だが・・・
「ねぇナナシ、本当に1週間ここに泊まるの?」
「どうしたんだいミスリル、そんな真剣な顔をして。俺に惚れた?」
「なっ?!ば・・・馬鹿言わないで!それよりもその手は何なのよ?!」
リルが突っ込みを入れるのも仕方ない、ナナシの左手はずっと横に座るルリエッタの膝の上なのだ。
どう見てもセクハラです本当にありがとうございましたである。
「ルリエッタも何か言ったらどうなの?」
「いや・・・私は別に・・・」
そう言うルリエッタは頬を赤く染めつつも何処か嬉しそうな感じである。
その表情に込み上げてくる感情、リルは自分で理解をしていた。
唯でさえナナシには心を奪われているのだが今日の窮地を救われた事で完全にデレていたのだ。
だがルリエッタと手をつなぎ続けているナナシに嫉妬して本心は決して見せていなかった。
「とりあえずミスリル、今日は疲れたからゆっくりと休もうぜ」
「・・・はぁ分かったわよ」
食事中というのもありリルはそれ以上の突込みを止めた。
何を言っても無駄だろうと考えたのもあるがナナシの行動にはきっと理由があると考えたからだ。
それでも心のどこかではナナシとルリエッタは既に出来ていて、離れたくないからああしていると言う考えが離れない。
ナナシは自分が惚れる程の人間なのだ、ルリエッタも惚れても全然不思議では無い。
だが今の様子を見る限り二人は間違い無く・・・
「もぅ、イライラする!」
個室に戻ったリルはベットに寝転がりながら怒りを枕にぶつけていた。
そして、自分がナナシと結ばれるのにはルリエッタと一緒にでないと無理ではないかと結論へ至りつつあった・・・
「そうよね・・・ウジウジ悩むなんて私らしくないわ!」
そう独り言を決意表明の様に言い放ちリルは覚悟を決めた。
今夜、ナナシの部屋へ行こう・・・と。
宿の中が静かになった深夜、リルは新しい下着に着替えてから自室を出ていた。
目指すはナナシの部屋である。
ドキドキする鼓動が周囲に聞こえているのではないかと考えるほど彼女は自分の行動に混乱をしていた。
そう、これは夜這いである。
自覚をすればするほどリルの顔は赤く染まり一歩ずつ静かに歩く足が震えていく・・・
だがルリエッタにナナシを取られて諦めると言う選択肢は彼女には無かった。
妾でも良い、愛人でも良い、彼と共に居たい!
それがリルの決意であった。
リルの部屋から順位ナポレ、ルリエッタ、ナナシの泊まる部屋が並んでおり廊下を静かに歩くリル・・・
そこで気付いた。
ルリエッタの部屋のドアが少しだけ開いていたのだ。
チラリと中を通りすがりに覗けば誰も居ない・・・
「えっ・・・まっまさか・・・」
部屋に居ないルリエッタ、そのままナナシの部屋の前まで来てドアに耳を当てれば・・・
「いくよルリエッタ」
「うん・・・」
遅かった、そう考えたリルはいつの間にか涙を流していた。
だが二番目でも良いと覚悟を決めたじゃないかと歯を食いしばって涙を腕で拭く。
そして、ドアを開いた。
「ナナシ、突然ごめんだけど聞いて欲しいの!私、あんたの事が好・・・えっ?」
ドアを開けて叫ぶように告げたリルは部屋の中を見て固まった・・・
そこには黒装束の様な服装に着替えたナナシと紺のローブを纏ったルリエッタが外へ出ようとドアの前に立っていたのだから・・・
「あっえっ・・・あれ?」
「ミスリル、お前寝惚けているのか?まぁいいや、これから呼びに行こうかと思ってたところだ」
「えっ?呼びに?えっ?」
「ルリエッタ、ナポレさんに声を掛けてきてくれ。ミスリルその格好は目立つから着替えてくれ、今からスマイル館の皆を救出しに出るぞ!」
「っ?!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます