第46話 呪い

「それはスケールが大きい話ですね」

私が笑うと、ヒナミさんはふふっと笑った。


「そうね、それで新米魔法使いはだいたい間違いを犯して、先輩魔法使いにたしなめられるのが、この業界の風習のようなものよ」


「そこで、俺たちが最大限、被害を少なくするのも仕事の一つだ」


先輩は猫舌なのか、コーヒーをチビチビと飲んでいる。



「そうね、私もレンちゃん達には色々とお世話になったからねー」


ヒナミさんは遠い目をして言った。



ちゃん。私は先ほどから気になっていた事をつい訊いてしまった。


「さっきのイノさんって魔法使いは、オネエ系の人なんですか?」


「イノちゃん?違うわよ。なんでそう思ったの?」


「なんか、ちゃん付けで違和感があって」



「あ、気付いた?」

ヒナミさんはニヤリと笑った。



「それはね。呪いなのよ」



「魔法使いは人の名前を呼ぶ時に、必ず『ちゃん』が付いちゃうのよ。自分の意思とは関係なくね。だから、敢えて名前を呼ばない様にしている人もいれば、敢えてなんにでもちゃんを付けて呼ぶ人もいるわ。昔の魔法使いがみんな仲良くしましょうってことでかけた魔法なんだけど、、、」


「呪いでしかないよね『アイちゃんの呪い』それが魔法使いにちゃん付けする人が多い理由」



ヒナミさんがコーヒーを一口飲む、それに合わせて私もコーヒーをすするが、いまいち気が落ち着かない。


何故、ヒナミさんは私がコーヒーに口をつけるたびに、楽しげに見つめるのだろうか。



楽しげというと語弊がある。

罠にかかって悶え苦しむ獲物を見物するような嫌らしい笑みで見つめられる。


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